「痛かったら手を上げてくださいね」。歯科医院に行くと治療前によくこう言われませんか? しかし、ちょっとした痛みでも上げていいのか、ある程度、我慢しなければならないのか、手を上げる目安がよくわかりません。また、痛みだけでなく、治療へのギモンが出てきた場合など、治療を中断したいことはいろいろあります。そんなときも手を上げていいものなのでしょうか。著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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まず、痛みについてですが、少しでも痛かったり、違和感があったりして、治療を中断したいなと思ったら、遠慮なく、手を上げましょう。
歯科医院によって、「アー、ウー、など何か声を出してください」と言われたり、音の鳴るスイッチを押す方法など、工夫がそれぞれあります。
現在、歯科の治療は昔と違って、痛みなく行うことが技術的に可能です。例えば歯を削ったり、歯周病で歯ぐきの奥の歯垢や歯石を取る場合など、痛みが出そうな場合は、あらかじめ歯ぐきに麻酔の注射をします。
「その麻酔注射が痛いんです!」
という声もありますが、これについても、技術があります。歯ぐきに局所麻酔剤の入ったゼリーや軟膏(なんこう)、いわゆる表面麻酔を塗ってから、注射をしたり、歯ぐきの粘膜だけを引き上げ、少量の麻酔薬をうち、麻酔が効いてから本格的に歯ぐきに注射をする方法です。こうすればまず、痛みは感じられません。
ただし、万全の態勢をとってから治療に入っても、「痛い」と感じる敏感な患者さんはいます。このようなときにすぐに手を上げてもらえれば麻酔の量を増やすことで、痛みを取り除くことができます。