【東京】日本では95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要とした金融庁金融審議会の6月の報告書が、参議院選挙を揺るがし、投資への関心を呼び起こしている。日本では長年、退職者は公的年金に頼ってきた。
ある週末に都内で開かれた資産運用セミナーは、投資の初心者でにぎわっていた。印刷会社で営業を務めるカンダ・ミツグさん(28)は、株投資で老後の資金をためることを検討しているという。
「私の世代は将来退職した時に年金があるかどうかさえわからない」。ファイナンシャルアカデミーが主催する4時間の無料セミナーに参加したカンダさんはこう話した。
政府は長年、税制優遇制度や手数料引き下げを目的とした規制緩和などを推し進め、貯蓄を投資商品に向かわせようとしてきた。しかし、日本人はリスクを嫌う国民性のため、金融資産の半分以上を利息がほぼつかない銀行口座に預けている。一方、米国人は資金の半分以上を株などのリスク資産に投じている。
金融審の2000万円という数字は、社会保障給付が大半を占める夫婦の収入が月平均20万9198円で、支出を差し引いて月平均で約5万円が不足するという計算に基づいている。
世論調査では、参院選を21日に控えた有権者の最大の関心事の1つは年金となっている。
インターネット専業の楽天証券によると、「少額投資非課税制度(NISA)」と個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の6月の申込件数は5月から約2倍に増えた。この機に乗じている企業もある。個人投資家向けに都内でコンドミニアムを開発しているメイクスは、「年金不足に負けない、老後資金2000万円のつくり方」と題したセミナーを開催した。