サテライト・オフィス勤務場所は自宅ほか、同社のサテライトオフィスも活用することができる(写真:SCSK提供)

 同社は過去に残業削減に取り組んだ際も、残業の有無にかかわらず一定の残業代を支給するなど、働き方改革に対する強いコミットメントを目に見える形で社員に還元してきた。今回も制度開始当初、「リモートワーク定着手当」として実施回数に応じて水道光熱費相当の手当を支給するなど、“本気度”を見せた。

 しかし、利用者が増えた理由はそうしたインセンティブの効果だけではないという。

「2013年からの働き方改革では、それぞれの現場が生産性向上に取り組みました。そのときの成果やメリットを社員自身が実感できているからこそ、新しい働き方を取り入れてみようという雰囲気が醸成されているのだと思います」(南氏)

 同社は残業削減の取り組みのなかで、ワークフローや業務内容を各現場で見直していた。その基盤は、テレワークを推進するうえでもかなり大きかったという。また社内のアンケート調査では、テレワークの実施回数を重ねるごとに「仕事の生産性」や「生活の質」が向上しているという結果が出た。こうした利用者自身の成果やメリットの実感が、制度の普及や定着につながっている。

 慢性的な人手不足の今、企業は社員それぞれの志向や事情に応じて柔軟に働き方を選択できる環境をつくる必要がある。それが人材確保にもつながる。テレワークもその柔軟な働き方の選択肢の一つ、というのが制度を積極的に取り入れている企業の考え方だ。

テレワーク活用の明確なルールと
“ジョブ型”へのシフトが急務

 うまく働き方の選択肢を増やしている企業がある一方で、視野を広げてみるとテレワーク普及にはまだ厚い壁がある。先述のとおり、企業の制度導入率もまだ低く、また実際の利用者数も伸び悩む。その背景には、ルールの曖昧さと日本企業特有の雇用システムの課題がある。

 昭和女子大学の八代尚宏特命教授は日本の労働時間管理を前提とした現行の制度と、テレワークの矛盾を指摘する。

「テレワークの良さは、時間や場所にとらわれず自由に集中して働けることですが、現状ではテレワークの場合もオフィス勤務と同じように労働時間を厳密に管理することが義務付けられています。それでは、テレワーク本来のメリットが享受できません」

 一部の人(高度プロフェッショナル制度対象者)を除き、労働時間によって働き方を管理する現行制度では、テレワークのやり方や時間の使い方を制限しなければならない。時間管理が煩雑になるからと、企業が及び腰になるのも無理はない。「テレワークを活用する企業のための明確なルールがない」(八代氏)ことは今後課題となってくるだろう。