討論会の場では、ジャマイカ系とインド系の親をもつハリス上院議員が、この発言を厳しく批判した上で、黒人に対する人種差別撤廃に関するバイデン元副大統領の議員時代の取り組みを糾弾した。

 討論会での厳しいやり取りは、メディアの大きな注目を集めた。この論争をきっかけに、ハリス議員の支持率が急上昇する一方で、バイデン元副大統領の支持率が低下する展開となっている。

もう一方の「忘れられた人々」
「打倒トランプ」の鍵を握る黒人票

 民主党が黒人票に注目する理由は、トランプ大統領への反動だけではない。黒人票の行方は、トランプ大統領の再選を占う重要なカギとなる。オバマ大統領支持からトランプ大統領支持に乗り換えた白人と並び、2016年の大統領選挙で民主党が敗れたもう1つの大きな理由が、黒人の投票率の低さだったからだ。

 2016年の大統領選挙では、2012年にオバマ大統領に投票した有権者のうち、7%が投票を行っていない。トランプ大統領に乗り換えた有権者(9%)よりは少ないが、接戦となった大統領選挙では、決して無視できない水準である。

 民主党にとって致命的だったのが、黒人票の動向だ。2016年の大統領選挙では、黒人の投票率が60%を割り込み、2012年(67%)を大きく下回った。オバマ大統領への支持から無投票に変わった有権者の約半数は白人だが、それに次いで多かったのは4割弱を占めた黒人だった。

 中西部の白人ブルカラー層が、トランプ大統領の勝利を生んだ「忘れれらた人々」だったとすれば、民主党の敗北を決定的にした黒人は、もう1つの「忘れられた人々」だった。伝統的に民主党の候補者は、積極的に黒人票を得ようとしてこなかったからだ。人種問題への意識が高い黒人の有権者は、そう簡単には共和党に投票しない。票を奪われるリスクが低い以上、民主党の選挙運動の重点は、黒人以外の有権者に置かれがちだった。

 実際に、2016年にオバマ大統領支持から無投票に変わった有権者のうち、選挙期間中に民主党陣営から何らかの働きかけを受けた割合は、4割強に過ぎなかった。2012年にオバマ大統領に投票し、2016年にも民主党候補に投票した有権者の場合(7割弱)より、かなり低い水準である。