4 バンドリングを分解し要素を独立させる
顧客の価値認識を高めるため、あるいはソリューションの構成要素を組み合わせて購買決定をしやすくするため、企業はよく製品をバンドリングする。シャンプーとコンディショナー、コンピュータとソフトウエアなど、補完的な製品が一緒に販売されることもあれば、子ども向けの食べ物におもちゃがつくなど、ある製品を買えば別の製品が無料でもらえることもある。
掌中のイノベーションは、そのようなバンドリングから解き放たれるのを待っていることがある。シアーズ傘下の工具ブランド、クラフツマンのマネジャーはまさにその機会を2005年に偶然発見した。
電動工具の製品ラインに関する顧客の意見を知ろうと開いた、あるフォーカス・グループでの話である。参加者の1人が、コードレス・ドリルにワークスペース・ライト(作業場用照明)がバンドリングされたプロモーションはけしからんと、クラフツマンを非難した。「お買い上げにつき無料進呈」というやり方に懐疑的なこの参加者は、ライトの分も価格に含まれているに違いない、そのせいで余分に払わされてはたまらないと考えたのである。
ところが、クラフツマンにライトを引き取ってもらいたいかと司会者が尋ねると、答えは断固としてノーだった。「あのライトはいちばんよく使うものです。もう1つほしいくらいです」と、その参加者は述べた。
一連のやりとりを観察していたクラフツマンのマーケティング担当者たちはピンときた。このワークスペース・ライトは単独で販売されたことがなく、ドリルの販促用にバンドリングされるだけだったが、明らかに、独立した商品として成功する可能性がある。
それから半年も経たないうちに、同社は〈C3〉という新しい電動工具ラインを発売した。そこには、すでに製品として存在するが、バンドリングやセットの形でしか提供されてこなかったものが数多く含まれていた。
19・2ボルトの〈C3ワーク・ライト〉、19・2ボルトの〈C3蛍光ライト〉がその筆頭である。発売から2年弱で、これらは交換用電池を除けば、〈C3〉シリーズで1位と2位の売れ行きを誇るようになった。
イノベーションの種を掘り起こすには、営業や顧客サービスの担当者に、現在バンドリングされているもののなかで、顧客が買おうとしている個別製品があったかどうかを尋ねることだ。そうすれば、市場にある他の選択肢では解決できないニーズを、その製品が満たすかどうかがわかる。
そのほかに検討すべきは、以下の問いである。バンドリングでしか提供していない製品・サービスのなかに、顧客が仕事をうまくこなすうえで、それ単独で採用している(または、採用する可能性がある)ものがあるか。バンドリング内の機能やサービスのなかに、顧客の仕事をサポートするうえで他のサービスより革新的なものがあるか。
いずれかの答えがイエスなら、バンドリングをほどいて個別にイノベーションを提供できる格好の機会である。