5 顧客のワークフローからバンドリングの機会を探る

 バンドリングされた製品を個別に売ってイノベーションの機会を見つけられるのであれば、その逆もまたしかり、である。バラバラに売られていた製品をまとめることで、新たな付加価値を創出しうる。多くの企業は、仕事全体をやり遂げるという顧客の視点から製品・サービスの相補性を考慮しないため、せっかくのチャンスを見逃してしまう。

 2004年まで、マイクロソフトは自社の〈ソフトウェア アシュアランス〉サービスを、単なるアップグレードの効率的な購入手段として考えていた。複数年契約を結んだ法人顧客は、定額料金と引き換えに、OSのアップグレード権を得る。

 だが、更新率が下がるなか、マイクロソフトはアップグレードを別の角度から検討し、ソフトウエア・ライセンスのライフサイクルを管理する仕事の一環としてとらえた。そのライフサイクルには、アップグレード・ニーズの評価、ライセンスの更新、1度購入したソフトウエア・ライセンスの管理などが含まれる。

 〈ソフトウェア アシュアランス〉はそうした仕事のごく一部でしか顧客をサポートしていないことに、マイクロソフトは気づいた。顧客にとって満たされていない重要なニーズの多くは、その他の部分に関連していた。

 同社はまた、そのようなニーズを満たし、仕事全体を遂行する製品をすでに開発していた。しかし、それに気づかず、一まとまりの魅力的な商品としてパッケージされていなかった。

 たとえば顧客は、新しいOSを導入した際のソフトウエアの非互換性をなかなか予測できなかった。しかし、マイクロソフトはすでに、この問題に対応するツールを社内用に持っていたのである。この一件を皮切りに、数多くのツールが〈ソフトウェア アシュアランス〉サービスの一環として加えられ、市場に投入された。

 マイクロソフトが〈ソフトウェア アシュアランス〉の変更を発表した年、同サービスの売上げは目標を10%以上も上回り、以来、更新率と収益は伸び続けている。

 既存製品をバンドリングするための革新的な方法を見つけるには、まず1歩引いて、このように問うことだ。

 「これらの製品は、顧客がどんな仕事をやり終えるための手助けとなるか」。同じ製品がさまざまな仕事に使えることを念頭に置いて、あらゆる可能性を探らなければならない。

 次に、ある特定の仕事を完遂するために必要なステップを検討するとよい。たとえば、目標や資源ニーズの確定、必要なインプットの収集、準備・手配、準備態勢の検証、中核業務の実行、実行状況の評価、必要な調整の実施、仕事の完了などが考えられる。

 それぞれのステップで顧客はどのような製品・サービスを利用するかを考えることで、革新的なバンドリングの機会を見つけることができる。