米国の対中関税第三弾部分だけで
6%割れの公算も

 6月29日の米中首脳会談で米中の貿易協議は再開となった。しかし、国営企業への産業補助金などの中国の国家資本主義体制の根幹にかかわる件で、中国が譲歩することはないだろう。

 「中国は米国の農産物を輸入すると約束した」とトランプ大統領は発言しているが、中国は公式に認めていない。ファーウェイへの禁輸措置緩和についても詳細はまだ固まっていない。進まぬ交渉に業を煮やし始めたトランプ米大統領は、関税が引き上げられていない残り3000億ドルの中国からの輸入品への25%関税賦課を再びちらつかせ始めた。

 第三弾部分だけでも、6%割れの公算はある。そのうえ米国への輸出品全額への25%関税となれば年率にして1%前後経済成長率を押し下げることになる。何ら対策をとらなければ成長率の6%割れは確実だ。

 ただ、6%台の経済成長率を達成するために、中国政府は金融政策、財政政策を総動員すると予想されるため、経済成長率達成自体を不安視する声は少ない。

 年初から、地方政府による地方債の発行は増加しており、地方債増発で財源を裏付けられたインフラ投資はこれから増勢を強めてくるだろう。「4月以降、地方政府は産業補助金を増やしている」(関辰一・日本総合研究所主任研究員)こともあり、民間投資も回復してくる。個人消費は、自動車販売以外の個人消費はもともと堅調。今年後半から来年にかけて減速に歯止めがかかってくるとみられている。

 しかし、こうした景気対策は諸刃の剣である。公的、民間部門双方を含めた債務増大をもたらすからである。

 債務膨張は顕著だ。預金準備率の引き下げなど中国人民銀行が金融緩和を進めてきたこともあり、6月の人民元建ての新規融資額は1兆6737億元と5月の1兆1855億元から大きく増加し、残高は144兆7100億元と前年同期比13.2%増となった。