すでにふれたように、景気対策の資金調達のために、地方政府は地方債を増発している。その結果、銀行融資以外の債券発行などの資金調達残高を示す社会融資総量の残高も、6月に前年同月比10.9%増の213兆2300億元となった。
今後、関税引き上げによるマイナスの影響を打ち消すための、追加の景気対策が講じられることになれば、地方政府債務も含めた債務はさらに膨らんで行くだろう。
日本のバブル崩壊後の状況を研究し、
教訓としている中国政府
この状況は、バブル崩壊後生産年齢人口がピークをつけ、潜在成長率が低下していった日本の90年代後半の状況と類似している。成長率が低下すると、財政出動を伴う景気対策が講じられる。公的機関を活用して融資促進策も講じられた。対策の効果があるうちは、潜在成長率を上回る一定の成長率を確保できるが、効果がなくなれば、反動もあり成長率が落ち込む。そして、再び景気対策が講じられる。
こうした過程を繰り返す中で、日本政府そして地方自治体の債務が膨らんでいった。また、日本の多くの民間企業は、バブル期に債務を膨らませていた。
そして、金融危機後の経済低迷期に、業績不振のなか、債務の重さに苦しみ倒産する企業が増え、金融機関は不良債権の増加に悩まされた。中国も不動産価格などが下落するようなことがあれば、90年代後半の日本同様に重い債務負担に喘ぐ事態に陥りかねない。
中国の生産年齢人口は2014年前後にピークをつけたとみられる。中国政府は、日本のバブル崩壊後の状況を研究し、教訓としている。それゆえ、経済成長率を大きく低下させないように対策を講じながらも、むやみに債務を拡大させることには慎重だ。しかし、現時点では、対米貿易戦争のダメージを相殺し、経済成長率を確保するための債務拡大に追い込まれている。
落としどころが全く見えない対米交渉について 中国は長期戦覚悟のようだ。トランプ大統領より親中な大統領の誕生を待つ戦略である。しかし、関税が引き上げられた状態が長期化すればするほど危機のマグマが膨らみ、中国経済を蝕むことになるだろう。