“アナログ”な物流業界において、親会社だった日立製作所のIT技術に支えられながら、テクノロジーでリードするのが日立物流だ。もともと製作所の単なる物流子会社だった同社は、日産自動車系の部品物流大手、バンテックなど大手企業の物流子会社を次々と買収することで規模を拡大し、今では日立グループ外から8割以上を稼ぐ。2016年には佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと資本・業務提携を結んだ(製作所による出資比率は59%から30%に低下)。こうした環境下、6月に19~21年度の新中期経営計画を発表。物流業界の抱える課題にどう向き合っているのか、日立グループ内外のリソースや協業を通じてどのように変革していくのか、就任7年目を迎える中谷康夫社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
――日立物流はこれまで自動化ロボットや、配送効率を高めるソフトウエアなどの新技術に、物流業界の中でも早くから取り組んできました。物流会社では珍しく研究開発費を設けて、R&Dセンターを新設してもいます。今年度からは新しい中期経営計画も始まりましたが、テクノロジーに先行投資し、差別化を図る戦略は、どのように展開していきますか。
最初に言いたいのは、世の中「インダストリー4.0」(製造業の自動化・データ化)あるいは「ソサエティ5.0」(IoT、ロボット、人工知能、ビッグデータなどを産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出すること)だとか、どこの業界でもデジタル化を進めている状況がありますけど、日立物流がデジタライゼーションに取り組むきっかけになったのは、もっと差し迫った問題でした。人やトラックが思うように集められなくなったのです。
会社は順調に成長してきましたが2013年くらいから人を採用できない、スキルのある人を集められない、ドライバーの高齢化も顕著になってきました。われわれは企業の物流を包括受託するサードパーティーロジスティクス(3PL)が主力で、協力会社やパートナー社員に頼った事業をやっていましたが、人手不足はコストアップに直結し、一方で熟練者不足は品質の低下を招き、行き詰まっていたのです。
「経験と勘と気合と根性」で、「4K」とわれわれ言っていますけど、4Kのままじゃ、破綻する。この問題に現場の人間も気づいていましたが、直視したくないと思っていた。
だけどちょうどその時期、デジタル化が劇的に進んで、新しい技術が出てきた。3PLの省力化、合理化のために、いろんなマテハン機器(運搬や荷役作業を助ける機器の総称)を導入しました。
それまで全く導入してなかったわけではないのですが、まだ踏み込めてないテーマがいくつかありました。ソーター(自動仕分け)とか自動倉庫の考えはありましたが、じゃあ無人フォークリフトはどうしよう、とかね。