そして、安倍首相のみならず、保守派全体が自民党に飲み込まれてしまっているのではないだろうか。例えば、自民党の強力な支持団体として「日本会議」の存在が取り沙汰されることがある。

 日本会議が持つ政界への影響力の強さがメディアで報道されることは少なくない。自民党議員の多くが、日本会議と関連がある「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーである(第179回)。だが、日本会議が主張する保守的な政策を自民党が実行することはほとんどない(第144回)。むしろ、日本会議が忌み嫌っているはずの社会民主主義的な政策が次々と実現されている。例えば、「改正入管法」の審議の時に日本会議は完全に沈黙していた(第200回)。

 要するに、自民党議員は保守系の支持者に対して、「日本は神の国」とか「八紘一宇」だとかリップサービスをしているだけだ。実は、神様なんてまったく信じていない。神道とは何か、この国の国体は何かなど理解しようという気もない。票をもらうために、保守派に調子を合わせているだけだ。

 はっきりいえば、保守派は自民党に裏切られているのだ。「安倍首相に裏切られた」という声が聞こえてくることもある。相当に不満があるだろう。しかし、議会制民主主義国の政党としては「世界最長の長期政権」の自民党から離れることはできないのだ。

野党の政策を自分のものにして
支持者を奪ってしまう自民党

 「世界最強のキャッチ・オール・パーティ」自民党の強さは、左派ポピュリズムに対しても存分に発揮されている。前述の通り、安倍政権は社会民主主義的な政策を実行してきたが、これは自民党の「伝統的な強さ」が発揮されたものだ(第169回・P.3)。

 安倍政権は、19年に予定される2%の消費増税によって得た財源を教育無償化や子育て支援など、現役世代へのサービスの向上に充てるとしている。これは、17年10月の衆院選で打ち出された公約だったが、元々は前原誠司・民進党代表(当時)が主張してきた「All for All」とほぼ同じ内容だった。いわば、前原氏の政策をパクったものだということだ。