ローマ・カトリックとプロテスタントの四つの違い
日本人から見ると、プロテスタントとローマ・カトリックは「同じキリスト教」に見えるかもしれません。ところが、キリスト教徒にとっては「違う宗教」と言ってもいいほど大きな違いがあります(ただし、第二バチカン公会議〈一九六二~六五〉以降、お互いの関係は近づいたともいわれています)。
たとえば、「カトリックからプロテスタントに改宗する」としたら、イスラム教に改宗するほどではないとしても、人生の軸が変わる大きな出来事です。東方正教会とカトリック、プロテスタントとの間でも同じでしょう。
ビジネスパーソンであれば、この違いは理解しておいたほうがいいでしょう。そこで詳しく論じる前に、わかりやすく象徴的な点をまとめておきます。
1 善行のローマ・カトリック、信仰のプロテスタント
カトリックは、どんな罪人も善行を積めば救われると考えます。ここで言う善行とは巡礼や寄付、ボランティアのことです。逆に、労働はややネガティブに捉えられており、蓄財には罪悪感すらあります。一方で、プロテスタントは、どんな罪人も信仰によって救われると説きます。当時、このようなルターの信仰義認説をまとめた「キリスト者の自由」がドイツで大ベストセラーになりました。
2 ゴージャスなローマ・カトリック、シンプルなプロテスタント
日本人がイメージする「教会」は、ステンドグラスやマリア像、宗教画で美しく飾られた尖塔を持つカトリックの教会だと思います。しかし、プロテスタントの教会は、簡素で装飾のないつくりが一般的です。
3 感じるローマ・カトリック、考えるプロテスタント
カトリックは、かつては聖書の自国語訳が認められず、神父の話や美術、音楽で信者に教えを説いてきました。神父によるミサをするのは基本的にカトリックだけで、プロテスタントにはありません(最後の晩餐に由来する聖餐式はあります)。こう考えるとカトリックは、神父の言葉や美術や音楽で神を「感じる」もの、プロテスタントは自分で聖書を読んで神について「考える」もの、と言ってもいいでしょう。
4 生涯独身のローマ・カトリック、結婚OKのプロテスタント
カトリックの神父は生涯独身で、プロテスタントの牧師は妻帯が認められているばかりか、女性の牧師も存在します。これは基本中の基本ですが、私は宗教について理解が浅い若い頃、大失敗をしたことがあります。あろうことか、マルタ出身のローマ・カトリックの神父に「ご結婚なさっていますか?」と尋ねてしまったのです! 今思い出しても恥ずかしくなるほどで、くれぐれも同じ轍を踏まないでいただきたいと願っています。
また、プロテスタントでは認められている離婚が、カトリックでは原則許されません(新約聖書には、離婚について大変ネガティブな記述があります)。実際には法律で認められている国が多いですが、フィリピンのように離婚が認められない国も残っています。