アンダンチ政府が打ち出した「地域共生社会」を体現している、仙台市の多世代複合施設「アンダンチ」での夏祭りの光景。中庭に面した右の建物は和食店と保育所。左は障害者の作業所「アスノバ」

地域住民が一体になって支え合う
「共生社会」に向かい始めた

 政府は、少子高齢社会に向けた社会保障の長期の政策目標として「地域共生社会」を掲げている。地域共生社会は、安倍政権がGDP600兆円を目指す「新3本の矢」の実現を目的として、2016年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」の中で初めてうたわれた。

 そこでは、「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる『地域共生社会』を実現する」とある。

 厚労省は同年7月に「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」を設置し、地域共生社会を次のように説明した。

「制度、分野ごとの縦割りや『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」

 高齢者や子ども、障害者というような区分を超えて、地域全体で「丸ごと」対応しようということだ。私たちの普通の暮らしは、特別の集団だけで成り立っていない。さまざまな人が集うのが自然である。手助けが必要な人が暮らす施設でも同様だろう。「我が事」として「丸ごと」を求めていけば、地域を新しく設計することになり、「まちづくり」にもつながる。

 だが、現状は老人福祉法や介護保険法、それに児童福祉法、障害者総合支援法などそれぞれ別々の法体系によって現場は動いている。

 そこへ、「地域共生社会」を目指した新しい施設づくりが志の高い事業者によって始まろうとしている。介護や保育、障害の各施設を単独で建てて運営するのではなく、同じ敷地内に集めて「全世代、全属性向け」という試みだ。

仙台市の多世代複合施設「アンダンチ」
サ高住が入居者の“看取りの場”にも

 仙台市で株式会社「未来企画」(福井大輔代表取締役)が運営する「アンダンチ」は、その格好の先駆例である。「アンダンチ」とは、仙台の方言で「あなたの家」のことだ。「あなた」は高齢者であり子どもであり、障害者であり、地域住民でもある。