イ・ジェヨン副会長がすがった
日本の大物経営者とは?

 その人物こそ、 “財界総理”たる日本経団連会長を務めた御手洗冨士夫・キヤノン会長(83歳)である。おそらくイ・ジェヨン副会長は、政財界に広くネットワークを持つ御手洗会長の、官邸や経済産業省への影響力に期待したのではないだろうか。

 過密なスケジュールを調整し、多忙を極める3人が顔を合わせた。面談に参加したのは、御手洗会長とイ・ジェヨン副会長、そして、韓国ロッテグループ総帥の辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫。64歳)会長である。キヤノンは、サムスンには半導体製造装置や(子会社を通じて)有機EL製造装置を納入しており、ロッテには韓国での事務機の販売代理店業務を任せていることから、ビジネス上の付き合いがあるのだ。

 ちなみに、重光会長も贈賄罪に問われ執行猶予付き判決を受けており、イ・ジェヨン副会長とは“保釈仲間”である。

サムスングループのイ・ジェヨン副会長とロッテグループの重光昭夫会長
サムスングループのイ・ジェヨン副会長(左)とロッテグループの重光昭夫会長(右)は“保釈仲間” Photo:Bloomberg

 面談では、親しい間柄に気を許したのか、イ・ジェヨン副会長の本音が漏れる一幕もあったという。「韓国にいてもろくなことがない。文政権はあの感じだし、韓国のマスコミもろくなことを書かないし、日本にいた方がよほどマシだ──」と嘆き節だったようだ。

 逆風にさらされている御曹司に、御手洗会長はどんな言葉を掛けたのだろうか。

御手洗会長本人を直撃!
面談で話し合われたこと

 韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めて間もない8月26日、御手洗会長を直撃した。

――日韓問題について伺いたいのですが。

 「……。分からん!」

――サムスンのイ・ジェヨンさんとは何を話されたんですか。

 「分からんって言うておる(笑)」

――ロッテの重光昭夫さんと3人でカラオケにも行かれたとか……。

 「……。彼(イ・ジェヨン副会長)とは30年来の友達だからね」

――イ・ジェヨンさんからはどんな相談事があったのですか。例えば、日本の経済産業省に対して何か口添えしてほしいとか……。

 「友人だからね。(プライベートで)そんな話はしないじゃん?」

――では、どんなお話を?

 「彼は孤立無援のつらい立場にある。この問題に関しては静かにしているとしか……」

――韓国がGSOMIAの破棄を決めた直後(8月22日)に、安倍晋三首相にも会われていますよね。産業界の立場からすると、日韓対立の長期化は由々しき事態なのでは。

 「ははは……」

――韓国のみならず、日本の産業界へのネガティブインパクトを考えると、輸出規制の強化は思慮の浅い政治判断だったとは思いませんか。

 「あれ(輸出管理の強化)は合法だからね。産業界としても理解、納得をしていますよ。違法じゃないから。ただね、日韓の問題については、今動くのは早過ぎると思います。静かに沈黙しているしかないんです」

御手洗・キヤノン会長
「イ・ジェヨン・サムスン副会長は30年来の友達」と語る御手洗・キヤノン会長 Photo:JIJI