――「がん患者に対して」という表現はどこにもありません。

 がん患者さんを中心に行われている緩和ケアですが、現在は徐々に、非がん患者さんに対しての緩和ケアも考えられつつあります。

 当初はがん治療後、余命半年と宣告されてからのターミナルケアという位置付けだった緩和ケアが、余命を宣告された時ではなく、がんと診断された当初から行うことが重要だという位置付けになりました。そしてさらには、「生命を脅かすような疾患、特に治癒することが困難な疾患」、つまり非がん患者さんも対象になったのです。

 また、緩和ケアは患者さんご本人に対してだけのものではありません。ご家族に対しても行われることがあります。患者さん、ご家族ともに、QOLを低下させるようなつらさがあれば、それを相談できます。つらさも、身体症状のものだけではありません。精神的なものまで含めて、トータルで受けられるのが緩和ケアです。

 ただ、冒頭でも触れましたが、緩和ケアの正しい知識はまだまだ浸透していません。少し前になりますが、2014年11月の内閣府の調査では、がん医療における緩和ケアを開始すべき時期を「がんの治療が始まった時から」と答えた人が21.8%だった一方で、「がんが治る見込みがなくなった時から」と答えた人が13.9%いました。後者は間違った思い込み。緩和ケアは、すべての患者が、病気を診断された時から、医療機関や診療科を問わず、入院、外来、在宅など診断の問わず、受けられるものです。

――実際に、患者さんからはどういう相談があるのでしょうか?

 身体面では、「痛い」「苦しい」「吐き気がある」「食欲がない」「身体がだるい」「しびれる」「眠れない」など。気持ちの面では、「気持ちが落ち込む」「抑うつ気分がある」「不安がある」……。相談内容は、病気の種類・病期・その人を取り巻く環境・性格などによって本当にさまざまです。

 また、相談内容に応じて、その道の専門家につなぐケースも少なくありません。「つらくてもう耐えられない。この状況を早く終わらせたい」と患者さんが訴え、希死念慮が見られる場合は、私たちだけでなく精神科の領域の疾患を専門としている先生とともに対処にあたることがあります。

 医療費など金銭的な悩みを抱える患者さんにはソーシャルワーカーを、食事をうまく取れない患者さんには栄養士やリハビリ担当者を、子どもがいるがん患者さんには子どものサポートに長けた専門家をつなげます。