視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
“本業転換”で明暗を分けた
「国産オーディオ御三家」
高校時代、少しだけオーディオに興味があった時期がある。
その頃は、自宅にあったパイオニアのシステムコンポ(アンプやチューナー、レコードプレーヤー、スピーカーがセットになったもの)でレコードを聴くぐらいだった。
だが、しばらくするうちに、それぞれの機器がどういう仕組みになっているのだろう、などと好奇心を抱き、オーディオ雑誌を読みあさるようになった。
大学に入学し一人暮らしを始めると、大学生協で売られていたパイオニアのミニコンポが、どうしても欲しくなった。とても一括では支払えなかったので、生まれて初めて学生ローンを組んだのを覚えている。
その時、数ある製品の中からパイオニアのコンポを選んだのは、自宅で最初に使ったメーカーのブランドに、特別な憧れのようなものがあったからだと思う。
その憧れのパイオニアは、今は見る影もないくらい、衰退してしまった。同社のオーディオ事業は2015年にオンキョーに譲渡され、会社自体、経営難のため今年初めに香港のファンドに身売りされ、上場廃止となった。