サウジ生産回復で原油価格は下落も、排除し切れぬ中東の武力衝突リスクサウジアラビアの原油生産施設への攻撃が、原油市場に落とした影は深刻だ。先行きをどう読めばいいのか(写真はイメージです) Photo:123RF

サウジアラビアの原油生産施設がイエメンのフーシ派の攻撃を受けた。突然、世界の原油生産量の5%の生産が停止した。施設の被害状況が不明なため原油価格は70ドルを超える上昇になったが、サウジの早期復旧観測で水準を切り下げている。しかし、予定通りの修復が可能であるかは不透明であり、イランに対する武力行使のリスクも残るため、原油価格は高止まりする可能性がある。日本経済にとっては当然コストアップ要因となり、企業業績などに影を落とすことになりそうだ。(マーケットリスク・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)

活用可能な余剰生産能力を
フル活用しても190万バレル不足

 サウジアラムコの2施設がフーシ派の攻撃を受けて(フーシ派はすでに犯行声明を出した)停止、約570万バレルの原油生産に影響が出る可能性が出てきた。570万バレルは世界の消費量の約5%に相当する。

 攻撃を受けた施設のあるアブカイクは、サウジアラビア東部州に位置する世界最大の原油前処理施設(日量700万バレル)を有している。ここは原油から塩分などの不純物を取り除き、製油所で処理可能な原油に加工する設備であり、製油所ではない。

 また、紅海に続くペトロライン(サウジアラビアを東西に横切るパイプライン)の始発点でもあり、この供給にも影響が出る可能性がある。つまり、サウジアラビアにとって極めて重要な拠点であり、軍が防衛していた施設だ。それが破壊された。

 このことは、低空で飛行してレーダーにも映らず、「人が乗っていないために相手側の反撃を恐れない」ドローン攻撃を防ぐことは容易ではなく、今後も同様の攻撃が原油供給を脅かす可能性が高まっている、ということを示唆するものだ。