赤ちゃんが胎内で耳にする言葉は、私たちが普段認識しているものとかなり違っているという(写真はイメージです) Photo:PIXTA

発達心理学と認知科学を専門とする針生悦子・東大教授は、赤ちゃんの「驚き反応」に着目するなどし、人が言葉を学ぶプロセスを研究している。昨今では、妊娠中の母親が“胎教”として絵本を読んだり、音楽を聴かせたりすることが盛んだが、教授によれば、赤ちゃんが胎内で耳にする言葉は、私たちが普段認識しているものとかなり違っているという。針生教授の著書『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』から、「子どもは母国語でも外国語でもラクラクと言葉を覚える天才」という通説の真偽を探る。

お腹の赤ちゃんが聞きたい音は
「おしゃぶり」で調べる

 言語は耳に聞こえてくる音声です。赤ちゃんがそれを聞きたがっているかどうかは、どうやって測定したらよいのでしょうか。

 まだ首のすわっていない赤ちゃんで調べようとする場合には、おしゃぶりの吸い方によって、赤ちゃんに聞きたい音を選んでもらうという方法がよく使われます。

 この方法では、まず赤ちゃんに特別なおしゃぶりをくわえてもらいます。このおしゃぶりからは何の飲みものも出てきません。しかし、赤ちゃんがおしゃぶりを吸った回数やその速さを測定し、それに応じて音を流したり、流すのをやめたりできるようになっています。それでたとえば、赤ちゃんが勢いよくおしゃぶりを吸えば音を流し、吸い方がゆっくりになれば音を流すのをやめる、といったことができます。

 赤ちゃんは賢いので、しばらくこのおしゃぶりを吸っていれば、自分のおしゃぶりの吸い方と音との関係を理解します。そうなればもう、赤ちゃんはおしゃぶりの吸い方をコントロールして、自分の聞きたい音を選ぶようになるのです。

 こうして調べてみると、生まれたばかりの赤ちゃんは、母親の胎内で聞いていたであろう音を聞こうとすることがわかってきました。たとえば、妊娠最後の数週間に母親が毎日声に出して読んだ物語と、母親が読んだことのない物語では、前者の方を新生児は聞きたがります(*1)。また、外国語より母親の話す言語を選んで聞こうとします(*2)

 つまりここからは、赤ちゃんは胎内で母親が話すことばをしっかり聞いており、それを覚えていた、ということがわかります。