永守重信・日本電産会長
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――永守さんが考えるリーダーの条件、資質とは何でしょうか。

 上に立つ人間に必要なのは、人の心をつかむ力。人心掌握力が全てですね。それは従業員が3人の会社だろうが、1万人、10万人、100万人の会社だろうが変わりません。

 リーダー自身は専門能力がなくてもいい。自分より専門知識を持った優秀な人を動かすことができれば、どんな組織も強くなるんです。1990年代に倒産の危機にあった米IBMを復活に導いたのは、ビスケットの会社(RJRナビスコ)から来たIT業界では“素人”のガースナー氏。専門能力なんて関係ないわけです。

 例えば、1匹のオオカミの隊長に率いられた49匹のヒツジの集団と、1匹のヒツジの隊長に率いられた49匹のオオカミの集団のどちらが強いでしょうか。オオカミが多い方が強いように思えますが、勝つのはオオカミが隊長の集団。つまり強いリーダーがいる方が勝つのです。

 グループ子会社の日本電産サンキョーが良い例です。買収したときは毎年100億円を超える赤字を出していましたが、私が乗り込んだ翌年には100億円を超える過去最高益を出しました。

――トップが人の心をつかみ動かすためには何が必要ですか。

 やはり人を引き付ける何ともいえない人間性を持たないといけないでしょう。人を動かすには温情と冷酷のバランスが必要です。世の中には「褒めて育てよ」なんて言う人がいますが、それで立派な人が育つなら世の中に悪い人なんて出てこないはずでしょう。叱るときは叱って、褒めるときは褒める。そのバランスが大事なんです。

 それから、学歴とか社歴とか、そういったことに関係なく皆を公平に扱うこと。一人一人の実力をしっかり評価してあげることが重要です。

 もう一つ、トップに立つ人に必要なのは、自分を燃やし社員の心に火を付ける“マッチ”を持っていること。つまり、自分の情熱、やる気を周りに伝えて社員を燃え上がらせることができる人こそリーダーなんです。