小泉進次郎環境大臣の「育休宣言」が大きな話題を呼んでいる。日本の男性の育児休業取得率は最近高まっているものの、2018年でも6%に過ぎず、女性の82%とは大きな格差が生じているが、これは一般的に、経営者・上司の無理解や男性の意識の遅れ等が大きいからだとされている。そこで、真に男性の取得率を大幅に引き上げるために、北欧諸国のパパ・クオーターのような育休取得の義務付け策も検討されている。
しかし、それ以前に、現行の育児・介護休業法(以下育休法)は、形式的には男女平等の仕組みとなっているものの、現実には女性が取得することを暗に想定しており、男性には取得が困難な面も少なくない。その意味では、現行の育休法や育児休業給付の制度を、男性が育休を取りやすくするよう弾力化するための規制緩和が必要とされる。
男性の育児休業が増えない
労使それぞれの事情
男性が育休を取りにくい要因としては、(1)職場の業務が繁忙で人手不足が深刻なこと、(2)自分にしかできない仕事を担当していること、(3)育児休業給付を受給しても給与と比べて収入が減ること、などがあげられる。
このなかでもっとも深刻な要因は、たとえ一定の期間でも完全に仕事から切り離されると、自分でしか対応できない要件が生じた場合に顧客や同僚に大きな迷惑がかかることである。これを防ぐためには、育児休業期間中に一定の範囲内で短時間勤務をしても、育休取得者に不利にならないような仕組みがあれば、それだけ安心して男性も長期の育休を取得することが可能となる。
現行制度でも、育児休業中に一時的・臨時的な就業が認められる場合があるが、それは、大災害等で出社できない社員が多数発生するような場合や、突発的に発生した事態に対応するため、他の者では手当てできない臨時の業務行う等、極めて例外的な場合のみ(育休中の就労に関するガイドライン)である。このため、企業側はこれに違反することを懸念して弾力的な活用を認めない場合が多い。
また、育児休業中の労働者は育児に専念するのが基本として、代替する別の労働者を手配するのは企業の責任という論理がある。しかし、現実には育休を取得する労働者の仕事内容が高度化するほど、派遣労働者等での代替は困難となる。
この他、3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度もある。しかし、これも定型的な業務を担う労働者の場合や育休後の働き方であればともかく、専門的な業務の社員が他の社員では困難な状況に対応して一時的に働く必要がある場合にはなじまない。