NOKIA 復活の軌跡『NOKIA 復活の軌跡』 リスト・シラスマ 著 渡部 典子 訳 早川書房 2000円(税別)

 本書『NOKIA 復活の軌跡』は、かつて携帯電話メーカーとして隆盛を誇ったノキアが、衰退の時期を経て、通信インフラベンダーとしてV字回復を成し遂げるまでの軌跡を追っている。

 著者のリスト・シラスマ氏は現ノキア会長。1988年にセキュリティーサービス会社「F-Secure(エフセキュア)」を創業。2008年にノキアの社外取締役に就任し、2012年から会長を務めている。2013年9月から2014年4月にかけては暫定CEOを兼任し、本書に描かれた「ノキア復活」をけん引した。

シラスマ会長の大改革は
「極度の心配性」になることから始まった

 シラスマ氏が実行したノキアの大改革は、大まかに以下の3段階で進められた。

(1)マイクロソフトに、主力の携帯電話事業と、地図サービスなど各種ライセンスを売却。その後、オンライン地図サービス事業もドイツ自動車メーカー連合に売却。携帯電話とその関連事業から完全撤退する。

(2)シーメンスとの合弁企業だった通信インフラベンダー「ノキアシーメンスネットワークス(NSN)」を完全子会社化。その後「ノキアネットワークス」に社名変更する。

(3)通信インフラ機器ベンダー、アルカテル・ルーセントを買収し、ノキアネットワークスに統合。エリクソン、ファーウェイとともに3巨頭の一角を占める通信インフラベンダーとしてノキアを再生させる。

 これだけの大転換を、2012年に会長に就任してからのわずか5年間で実行したシラスマ氏の手腕は、目を見張るものだ。しかも、(1)の携帯電話事業の売却と、(2)の通信インフラ事業の完全子会社化は同時並行で進められたのである。

(1)から(3)の3段階をつつがなくこなし、見事「復活」を果たせた理由について、シラスマ氏は、自らの行動原則「パラノイア楽観主義」によるところが大きいと分析する。

 パラノイア楽観主義の「パラノイア」とは、不安や恐怖心のせいで、ありえない妄想にとらわれてしまう病名だ。ここでは「極度の心配性」くらいの意味で使われている。

 パラノイア楽観主義に基づく行動では、まず自分が対峙している状況を把握した上で、パラノイア的に、悪い結果も含むあらゆる将来シナリオを徹底的に想定する。いわゆる「シナリオプランニング」である。

 いくつかのシナリオを想定すると、その中にベストなケースと、破滅につながるワーストなケースの両方が含まれるはずだ。それらが明らかになれば、話は単純になる。ワーストを防ぎ、ベストなシナリオに向かえるよう、リーダーシップを発揮していけばよい。

 さまざまなシナリオを想定しておけば、状況を柔軟に「楽観的」に見ることができる。