東京海上ホールディングスの小宮暁社長トップ就任後、初の大型買収となった東京海上ホールディングスの小宮暁社長 Photo:REUTERS/AFLO

東京海上グループが、3255億円を投じて米富裕層向け保険大手のピュアグループを買収することを決めた。4年ぶりの大型買収に踏み切ったその狙いについて、5つのキーワードと数字で読み解いていこう。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

1【レシプロカル】米国版の共済(互助組織)

 東京海上ホールディングスが、傘下の米HCCを通じて買収することを決めた米ピュアグループは、富裕層向けに特化した「レシプロカル」の運営を受託している企業だ。

 レシプロカルとは、日本の共済に類似した互助組織。米国では株式会社や相互会社と並び保険事業を展開する第三の形態として50以上の団体が存在しているという。

 法人格は持っておらず、保険の引き受けといった業務全般は代理企業に委託し、運営の対価として手数料を支払う仕組みだ。

 ピュアグループは、富裕層向けレシプロカルが取り扱う保険料の約20%を手数料として受け取っており、それが収益の大部分を占めている。

 2018年度の取扱保険料は1011億円。売り上げとなる手数料収入は240億円で、純利益は55億円だった。

 仮に災害などでレシプロカルの損害率が悪化しても、保険料に基づく手数料収入に対しては影響が少ないため、東京海上グループの業績に安定的に貢献することが見込めるのが利点だ。

 東京海上によると、ピュアグループが運営を受託するレシプロカルは、引き受けた案件のうち過半は再保険に出しており、災害などによって多額の保険金支払いが発生したときのリスクも抑えているという。

2【96%】契約更新率

 ピュアグループ買収の決め手の一つになったのが、96%という高い契約更新率を誇っていることだ。

 取扱保険料のうち57%を占める住宅火災保険では、1億円以上の邸宅を対象に引き受けており、契約者ごとに専属スタッフが付く。

 防災、防犯対策のアドバイスをしたり、住宅の停電時には蓄電池を貸与したりするなど、専属スタッフがワンストップできめ細かい対応をすることで、富裕層から支持を得ている。

 さらに、火災保険の引き受けにおいては独自の厳格な基準を定めることで、保有契約の「質」を維持している。

 例えば、山間部や沿岸部などに位置する住宅は、山火事やハリケーンといった災害の影響を受けやすいため、保険の引き受けには慎重だ。

 昨年11月に米カリフォルニア州で発生した大規模な山火事では、損失額が合計1兆円を超え、損害率が数百パーセントにも上った保険会社があったが、ピュアグループは同損害率を100%未満に抑えることができたという。

 また保険の引き受けに至るまでは、貯水槽の有無や万一火災になったときに消防車がスムーズに行き交える道路があるかなど、細部まで徹底して調べるのが特徴だ。

 そうした独自の基準とノウハウによって、富裕層であっても引き受けの対象をいたずらに広げない姿勢が、既契約者の安心感と信頼度を高めることにつながっているようだ。

 契約者数は現在約9万人。ここ数年は毎年1万人強のペースで契約者が増えており、契約者1人当たりの単価は110万円超に上る。