MQ会計は、会計の大前提である
『貨幣的評価の公準』を超えた『超会計』

 (まずは6つを覚えればいいのね……)
 早苗は手帳にメモを走らせた。

 そう言うと川上は早苗の席に歩み寄り、早苗の決算書を手に取った。

 「じゃあ、実際にさなえ社長のP/LをMQ会計に変換してみようか?」
 早苗の決算書を手に取ると、川上はホワイトボードの前に戻った。

 「MQ会計も直接原価計算(DC)をベースに作成しているので、会社全体の損益の情報は埋めるところが違うだけで、同じ数値が入ります。右側の大きなボックスはその形から『4畳半』と呼んでいます。この4畳半にDCのP/Lから数値を持ってきます」

 MQ会計のボックスに数値を埋めながら、川上の力の入った説明が続く。

 「DCとMQ会計の違いは1個当たりの情報の有無です。1個当たりの情報を知るためには、何個売ったか? という『数量』のデータが必要です。この数量情報というのが、会計にとっては革命的なアイデアなんです! さなえ社長、なんでか分かる?」

 「ちょっと、分からないですね」早苗が質問する。

 「会計でつかうモノサシは、すべて『お金(円)』で表現するという大前提がある。数量とお金は違うだろう?」
 川上はホワイトボードに「会計の前提 貨幣的評価の公準」と書いた。

 「たしかに、何個売れたかという数量の情報は、決算書には出てこないですね」

 「でも売上は、『売価×数量』という式で成り立っている。最も重要な売上情報を、経営に役立てるためには、『お金』だけじゃなく、どうしても『数量』の情報が必要なんだ。その意味でMQ会計は、会計の大前提である『貨幣的評価の公準』を超えた会計、いわば『超会計』なんだ!」

 川上は、売上(PQ)250円、変動費(VQ)150円、付加価値(MQ)100円を数量(Q)10個で割ることによって、1個当たりの売価(P)25円、変動費(V)15円、付加価値(M)10円を計算し、MQ会計を完成させた(下図表)。

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。