インフラ産業の中でも労働集約型といわれる鉄道事業。若い世代の人口減や大量採用だった国鉄時代入社組の退職を受けて、あの手この手での省力化を進めている。今や、東京圏のそれなりの規模の駅でも、券売機のネットワーク化などを進め、早朝深夜は駅員不在で営業するケースが増えている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

早朝深夜は駅員のいない駅も…
人口減を見据えた省力化が加速

特急の女性運転士人材難を受けて女性や中途採用の拡大、さらにIT化など、鉄道事業者は様々な改革を行っている Photo:PIXTA

 鉄道事業者の人口減少に備えた省力化の取り組みが加速している。券売機や自動改札機のネットワーク化、インターホンなど連絡手段の整備が進み、首都圏でもローカル線区はほとんどが無人駅になっている。東京圏のそれなりの規模の駅でも、早朝深夜は駅員のいない時間帯が増えている。また定期券や企画乗車券などを発行する有人窓口は集約され、多機能券売機への置き換えが進んでいる。

 省力化の波は駅から列車にも波及している。「JR東『ワンマン運転拡大』に見る、鉄道乗務員レス化の未来」で取り上げたようにJR東日本は、これまで1~2両の「短編成」に限って実施していたワンマン運転を、3~6両の「中編成」、7両以上の「長編成」にも拡大する方針だ。

 またJR九州は、9月18日に国土交通省で行われた「第3回鉄道における自動運転技術検討会」で、現在開発中の新型ATSをベースとした自動運転の検討状況を報告している。10月8日の西日本新聞は、JR九州は駅にホームドア未設置かつ踏切のある路線でのドライバーレス運転の実現を目指し、今年度中に福岡県内の路線で実証実験を開始し、実用化を目指すと報じた。

 鉄道事業は、インフラ業の中でも労働集約型産業の側面が強いという特徴を持つが、その中でも機械化や電子化、IT化など、時代の変化に応じた省力化が進められてきた。

 例えばJR東日本の鉄道事業に関係する社員数(本体)は、1987年の民営化時に7万1800人だったのが、1997年は5万5680人、2007年は4万5680人、2017年には3万9890人と30余年で4割以上も減少している(いずれも4月1日時点)。とはいえ、合理化と称して社員を解雇していったわけではなく、基本的には退職者数に対して採用者数が少ない状態が続いたことによる自然減である。

 JR各社社員の年齢構成は非常にいびつで、年代別に見ると国鉄時代に採用された55歳以上が最多で、国鉄末期からJR初期に一時新規採用を停止していた影響で40代後半から50代前半が極端に少ない。その後は新卒採用と中途採用を計画的に行ったので、ようやく40代以下の年齢構成は安定するようになったが、今後は別の問題に直面する。若年層の減少である。