“鬼の検査官”として、保険会社や保険代理店を震撼させてきた金融庁の成島康宏氏。2019年7月に監督局保険課での特別検査官の職を辞し、同年9月にペット保険最大手のアニコム損害保険に移籍した。その成島氏が11月14日、保険乗合代理店協会の全体会議・定例会に登壇し、代理店検査の実態と対策について語った。
検査官が乗り込んでくる
代理店検査の中身
■立入検査のイメージ
まず、代理店への立入検査は、7月~翌年6月までの役所の事務年度に応じて計画を立て、実施される。立入検査の概要はこうだ。
1.主に財務局が実施
2.不祥事件、苦情等を基にオンサイト先を選定
3.検査官の陣容は3~5人
※必要に応じて金融庁から検査官を派遣
4.検査期間は1~2週間程度
5.検査内容は全国均一
立入検査の流れとしては、予告した上で検査に入るのが一般的だ。午前中に主任検査官が代理店に電話をして、その日の午後に検査官が赴く。重要事項の説明などを行いながらヒアリングが始まるが、もうこの時点から検査は始まっている。
実は重要なのが、代理店の概要についてのヒアリングだ。立入検査の前に、代理店設立の経緯や営業の概要、保険業法への対応など各項目について代理店が記入するのだが、10ページを超える分量にもなる。そして、ここに書いたことと実態との間に乖離があれば多面的に分析・検証されることになる。
その後、立入検査が始まり、分析・検証、ヒアリングが行われ、随時、事実関係を確認するための質問表が出される。また不備事項があれば確認表に記載される。たいてい、回答には中1日しか時間的な猶予がないため、ヒアリングされた段階でメモを作っておき、検査官の質問を予測しながら準備を進めておいた方がよい。
そして、立入検査終了後に事実確認のための講評が行われるわけだが、検査官が指摘した事項について、当局幹部のさらに厳しい指摘を受け、内容が変わることもあるという。検査官との対応が済めば、それでOKというわけではない。
最後に、検査結果通知書が出されて検査は終了となる。そこで指摘された事項については1ヵ月ほどで改善報告書を出さねばならないが、この「関門」を突破するのは決して容易ではない。しっかりと内容を作り込まなければ、改善ヒアリングが1年、2年と続く場合もあるという。
ちなみに、予告をしない無予告検査もある。こちらは、実態把握の観点から実施されるもので、かなりシビアな質問や事実確認が行われることになる。大まかな流れは予告ありの検査と同様だが、時間的にはかなりタイトなものになることを覚悟しておかねばならない。
代理店の本社や支社の実地調査については、午前8時30分から午後5時までみっちりと行われることになる。無論、代理店の朝会で話す内容についても目を光らせている。その場しのぎで済まそうとしても、百戦錬磨の検査官の目はごまかせない。
その後、パソコンや机、かばん、キャビネットの中まで精査され、募集関連資料等のチェックが行われる。そして支社長ヒアリングや募集人のロープレなどのチェックもあり、不備があれば実地調査の指摘一覧表が作成される。検査官によって指摘事項が異なることもあるが、なぜ不備が発生したのか、その理由や改善策について検査官に問い詰められることに変わりはない。
こうした実地調査は立入検査の初期段階で行われることが多いため、普段からきちんとしておかないとボロが出やすい点には注意しておきたい。