家でよく話すのに学校では“固まる”
先生のいる前でもいじめの標的に

「緘黙」の20代娘を抱えるのは、母親のBさん。娘は小さい頃から、大人しかった。

「家の中では、よくしゃべっていたのですが、外に出ると、まったく話せない。私は家にいるから見たことないのですが、“固まっちゃってる”とかいわれるんです」

 授業で指されると答えることはできたが、中学の途中から、学校にも行けなくなった。当時、不登校親の会に入ったり、教育相談にも出かけたりしたが、Bさんが娘の状態を説明するだけで、「緘黙」という話は聞いたことがなかったという。

「元々、私自身が大人しかった。(だから娘も)だんだん大人になるにつれ、必要に迫られるから、しゃべれるようになるんじゃないか」

 そうBさんは思っていた。

 しかし、そのうち娘は外へ出られなくなってしまった。以来、部屋からは出られるものの、10年以上引きこもっている。

 そんな娘が、ネットで「場面緘黙」という症状を見つけてきたのは、最近のこと。Bさんも「緘黙」のことを初めて知った。

 娘は、自分が「緘黙」とわかってから、少しずつ、こんな「いじめ」に遭っていたなどと話すようになった。

「先生のいる前でも、いじめられていた。不登校になってから、中間テストの初日にやっとの思いで学校に行ったら、“なんで来たんだ”と、いじめっ子にいわれたそうです。そんなことも、全然知らなくて。フラッシュバックみたいなものもあるみたいで、よく耐えたなというくらい、相当つらかったと思います。私のほうは“じゃあ、行けれるようになったら行ってね”という状態で、ずっと来てしまったんです」

 Bさんが期待しているのは、娘が外に出ること。娘はいま、本を読んだり、母親と一緒に料理を作ったりして、心が平穏に暮らせる状態を保っている。

「どうするの?」ということはいえない。本人が「どうにかしなきゃ」と思い始めるときをじっと待っているという。