家族を困らせない相続第1回
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相続にまつわる二つの問題、税金と争族。両親亡き後、遺族間でもめ事が発生するケースは後を絶たない。2020年1月5日(日)まで全18回でお届けする特集「家族を困らせない相続」の第1回は、「争族」の視点から、起こり得る相続の失敗談とその処方箋を提示する。(監修/弓家田良彦〈税理士法人弓家田・富山事務所代表社員〉)

「週刊ダイヤモンド」2019年8月10日・17日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数字など情報は雑誌掲載時のもの

遺産争いで裁判になるケースは
5000万円以下が実に4分の3を占める

 家族の数だけ、相続の形も千差万別だ。家族といえども個々別々の人であり、思惑や考え方も当然、異なる。それ故に多くのドラマがあり、同時にトラブルも起こる。

 例えば、子供たちが「兄弟姉妹でもめたくないので、実家の財産の内容を親が元気なうちに知っておきたい。できれば早めに財産を分けてほしい」と考えていても、親は「何があるか分からないご時世。今後のために生きているうちはおカネは渡したくない」「財産を残すと兄弟姉妹でもめるかもしれない。残さずに使い切ろう」と考えているかもしれない。そのような認識のズレが蓄積し、相続トラブルへと発展することが多いのだ。

 相続に関する問題は二つに大別できる。一つは、「争族」と表現される問題だ。両親亡き後、遺族間でもめ事が発生するケースは後を絶たない。

「相続争いはお金持ちの話でしょ」「うちにはそんな大した財産は残っていない」と思うかもしれないが、そうではない。遺産争いで裁判になるケースは、5000万円以下となると全体の75%、実に4分の3を占めている(平成29年司法統計「家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち認容・調停成立件数」より)。相続争いはむしろ遺産が少ない場合に起こりやすいのだ。

 こうした相続にまつわるトラブルは、ある程度の傾向や法則がある。円満に相続を終えるには、親子や兄弟姉妹の間で信頼関係を保つことが最も重要だが、前提として、こうしたトラブルの火種を把握しておかなければならない。

 ここでは、専門家や当事者への取材を基にした下記のような実例を、その処方箋とともに紹介する。

【ケース1】相続財産は自宅1軒と預金が少々、自宅は長男が母と同居していた
【ケース2】認知症の母を介護していた父が先に亡くなってしまった
【ケース3】音信不通のきょうだいがいる
【ケース4】子供はいないがきょうだいがいる
【ケース5】30年以上会っていない前妻の子供がいる
【ケース6】節税対策で長男の嫁と養子縁組した