就活中は誰しも疑問や悩みにぶつかる。そんなときはプロに頼るのが一番。採用コンサルタントの櫻井樹吏氏に、採用現場の目線でズバリ答えてもらった。(取材・文/金田修宏、構成/坂本久恵)
採用コンサルタント
櫻井樹吏(さくらい・じゅり)
1980年生まれ。「ダイヤモンド・オンライン」でのキャリアコラムが累計1056万PV突破の採用コンサルタント。総視聴再生回数9億を超える大人気YouTuberとの就職トークセッションや、エンタメ性を取り入れた中小企業の採用手法など従来の就職コンサルタントとは全く異なる切り口で評価されている。個人の他に、セミナー会社のブランド事業と社団法人の理事に携わる。
Q1:自分のやりたいことが見つかりません。どうしたらいいですか。
自分のやりたいことが分からないのは、「誰かの期待」に応えようとしているからです。就活生にとってほとんどは「親」でしょうから、まず親の期待をスパッと振り切ってみてはどうでしょうか。
米国の就活では「何になりたいか」ではなく「自分はどうありたいのか」を問い続けます。人と接するのが好きなのか、あるいはモノと接したいのか。何かをつくりたいのか、それとも何かを売りたいのか。最初から具体的な職種を考えようとしないことがポイントです。
また、自分が「かっこいい」と思う社会人を探してみるのも一つの手です。ドラマや映画を見て弁護士や医師、客室乗務員などに憧れ、その職業を目指す、といったことはよくあります。「かっこいい」と思うのは、それが自分の価値観に近いからです。その意味では、興味がある業界だけに限らずインターンシップに参加し、ロールモデルを探してみるといいでしょう。
Q2:自己分析がなかなかうまくできません。何かいい方法を教えてください。
自分のことは、自分では分かりません。かといって自分に近い存在である親が考えたところで、「やさしい」「真面目」といった、ありきたりでぼんやりした情報しか出てこないでしょう。ここは、社会人としての目線で客観的に見てくれる第三者に「長所・短所」を指摘してもらうのが一番。教職課の先生だけでなく、社会人として働いている人でも構いません。
自己分析ができないのは、まだ「動いていない」ことの裏返しです。たとえばインターンシップに参加すれば、実際に仕事を体験する中で「自分」というものが多少なりとも見えてくるもの。そういう経験をした後で、自己分析や自己PRを考えても遅くはありません。
Q3:何か「強み」がほしいのですが、資格を取った方がいいでしょうか。
就活において資格取得は必ずしも必要ではありませんが、取りたいと悩んでいるのであれば、TOEIC、ファイナンシャル・プランナー、セキュリティ関係のISO審査員、知的財産管理技能士の四つをお薦めします。英語力、お金の流れの理解、情報リテラシーといったものは、身についていれば必ず「武器」になります。
Q4:インターンシップの選考で落ちてしまいました。もうこの会社に応募しても採用は期待薄でしょうか。
某大手企業のインターンシップの選考に関わった経験からいえば、一度インターンシップに落ちた学生が次のインターンシップに応募してきても、選考から外される可能性が高いです。応募倍率が非常に高い中、企業としては新しい学生の中から選びたいからです。
では、本選考でもそうかといえば、その企業の答えは「ノー」でした。他の大手も同じだと思います。ただし、インターンシップに参加した学生が有利であることは間違いありません。採用する側としては、インターンシップの評価を基に面接で突っ込んだ質問をすることで、強みを中心により深く人物像が分かり、判断しやすくなるからです。企業が最も恐れるのは「そんなはずじゃなかった社員」。より信頼性の高い情報で判断したいと考えるのは、当然だと思います。
Q5:情報が多過ぎて、どの企業に絞ったらいいのか、迷ってしまいます。
いまは昔と違い、どんな一流企業もオープンに採用情報を出していますから、迷って当然です。そんなときは、情報収集時にちょっと強めにフィルターをかけ、現実を知るところから始めてみましょう。中途半端にブレーキをかけず、大手志向なら「一部上場」だけにするとか、わがままになってみる。その結果、インターンシップに落ちたりと厳しい現実に直面するかもしれませんが、それを基準に自分に必要な情報をふるいにかけられるようになります。大学受験の際、模試を受けて合格圏内かどうかが分かって、ようやく対策を打てるようになるのと同じことです。
Q6:子の就職先選びが心配です。どんなアドバイスをすればいいでしょうか。
親は就職を手段として「幸せになってほしい」とか「失敗しないでほしい」と考えますが、子は「自分にふさわしい仕事をしたい」など、もっと近いところに目標を置いていたりするものです。つまり、ゴールが違っているわけですから、そこを放置したままアドバイスしたところで、かみ合うはずがありません。まずは親子でしっかりと「何がゴールか」を確認し合うことが大事。また「価値観」が違うということも、認識しておくべきです。