アイドルグループ「嵐」の二宮和也氏をはじめ、今年は多くの芸能人の結婚のニュースやスキャンダルが話題になった。芸能人は「人気商売」といわれるが、ワイドショーを賑わす彼らの結婚・恋愛・スキャンダルは、彼らのビジネスにどれほどの影響を与えるのだろうか。経済学者であり、アイドルやサブカルチャーにも詳しい上武大学ビジネス情報学部教授の田中秀臣氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
「アイドルの結婚」は
ビジネスにどう影響するか
――今年は芸能人の結婚のニュースが多かったですね。世間を驚かせたニュースの一つとして、嵐の二宮和也さんの結婚発表があります。彼は「アイドル」と呼ばれる立ち位置にいるわけですが、そもそもアイドルの結婚や恋愛は彼らのビジネスに影響を与えるものなのでしょうか。
ケースバイケースですが、短期的には影響があるかもしれません。今のアイドルは、「物語消費」です。つまり、アイドルの成長ストーリーをファンとともに共有しながら育てていく。その物語の中にはアイドルとファンしかいませんから、やはりアイドルのパートナーや恋人はファンからするとなじみにくい存在です。
しかしながら、絶えず成長していく未完の物語だからこそ、「アイドル自身の成長」という側面に吸収できる結婚や恋愛ならば、ファンも“推しやすい”。こういうケースでは、短期的なダメージも小さく、長期的にもファンが離れていくことはないでしょう。
一方、それが略奪婚とか不倫とか、明らかにアイドル自身の成長にとって障害になってしまうケースだと、物語消費という枠組みの中に組み込みづらいといえます。
――結婚や恋愛をうまく自分自身の成長物語に組み込み、ブランド再構築につなげられた人はいますか。
松田聖子さんですね。彼女は、自身の恋愛やスキャンダルをむしろ、自分のアイデンティティーとして価値を高めていく要素とすることに成功しました。私も昨年、彼女のコンサートに行きましたが、客席は満員。その多くが、女性だった印象です。彼女が苦楽を乗り越えた人生の物語に、ファンの女性たちも共感しているということなんだと思います。
そして、松田さんの成功例を現代的に刷新したのが、指原莉乃さんでしょうね。指原さんはスキャンダル報道が出て、AKB48から若手グループのHKT48に移籍しましたが、彼女はそこから飛躍しました。スキャンダルという損失以上に、市場価値を高めたのです。