冬になると食べすぎてしまったり、いつも寝足りない感じがしたりするという人は多いかもしれない。しかし、実はこれらの症状は「冬季うつ」の可能性が高いという。一般的にはあまり聞きなれない「冬季うつ」とは何なのか。原因と対策、効果的な治療法などを、冬季うつ外来を開設する東京都日野市・朝がおクリニック院長の工藤嘉久医師に解説してもらった。(清談社 山中千絵)
多忙なビジネスパーソンに多い
寝すぎ&食べすぎの「冬季うつ」
毎年冬の時期は、厳しい寒さのせいで布団から出られず、つい長く寝てしまうもの。さらに、冬眠するわけでもないのに炭水化物や甘いものが無性に欲しくなりいくらでも食べてしまう、という人も多いのではないだろうか。これらの症状が出るのは寒さのせいだと考えがちだが、実は冬の時期に引き起こされることが多い「冬季うつ」という疾患の可能性があるという。
「『冬季うつ』は他の季節に比べて冬だけ異常に寝すぎてしまう、食べすぎてしまうという特徴を持つ季節性感情障害の一種です。一般的にうつ病というと、不眠や拒食を想像しますが、冬季うつは真逆の症状が出ます。症状は正反対でも『うつ』と名がつくだけあり、気分の落ち込みや集中力の低下などの抑うつ症状も現れる病気です」(工藤嘉久氏、以下同)
一般的なうつ病は過度のストレスなどが原因として挙げられるが、冬季うつの場合、「光」が大きく関係するという。
「冬は日照時間が減るのに伴って、人々が浴びる日光の量も減少します。すると、摂食行動や睡眠をつかさどるセロトニン神経機能が低下しコントロールがきかず、過食や過眠を促進してしまうのです。日照量の減少が、冬季うつの原因と考えられています。関東圏より北陸地域に冬季うつ患者が多いのも、日照時間の影響でしょう」
日照量の減少が関係する冬季うつは、普通のうつ以上に幅広い人がなりやすい病気というわけだ。老若男女にリスクが潜む冬季うつだが、仕事が忙しいビジネスマンはとりわけ注意すべきだという。
「仕事が忙しいビジネスパーソンは、日の出前に起き、日中はほぼオフィスで仕事、帰宅するのは日が落ちてからという、あまり光を浴びないライフスタイルの人が多いため、私の肌感覚ですが、冬季うつ罹患者が多いですね。特に冬は、年末年始という極めて繁忙な時期を迎える関係で、メンタル的な不調も起こしやすい。男性は女性より自分の体の変化に鈍感なので、一般的なうつを発症して病院にかかってから、冬季うつも併発していたことに気付く人が多いです」