例えば、部長・課長が混在するP6の場合、平均的な評価であるCランク(基準額)の月収は66万円となっている。仮に、最高評価のAAランクが付いても69万円、最低評価のDランクが付いても65万円といった具合だ。P6の管理職の年収は1100万円前後だと思ってもらえればいい。

 事業場長クラスのP1~P3ともなると「業績連動分の構成比が大きくなるが、最低の評価が付いても年収1500万円以上は保証されている」(パナソニック幹部)という。

 管理職の最低ランクのP8でも年収990万円前後なので、ほぼ全ての管理職が年収1000万円以上を手にしていることが分かる。評価のいかんにかかわらず、極めて高待遇だといえるだろう。

 ちなみに、2019年3月期の有価証券報告書によれば、組合員も含めたパナソニック社員の平均年収は774万円(平均年齢45.6歳、平均勤続年数22.8年)である。日本人の給与所得者の平均年収が441 万円(平均年齢46.4歳、平均勤続年数12.2年)、電機業界を含む製造業の平均年収が520万円であることを考えると(日本人と製造業の平均年収は18年の国税庁「民間給与実態統計調査」による)、パナソニック社員の給与は高いレベルにある。

年収1500万円以上の
“働かないおじさん”が滞留

 それにもかかわらず、若くして管理職になった中堅幹部たちからは、硬直的な賃金テーブルに対して不満の声が上がっているのも事実である。

「年功序列がまかり通っており、高齢の“働かないおじさん”が年収1500万円以上の高給をもらっている。しかも、彼らが滞留しているので上のポストが空かない」「管理職になるとき、P3へ上がるときといった節目の関門では昇格試験があるのだが、それをパスする基準に直属の上司の私情が挟まれるなど、透明性や公平性に乏しい」という声がそうだ。

働かないおじさん
中堅幹部からは高給取りの「働かないおじさん」に不満が集中。早晩、リストラのターゲットになりそうだ Photo:AndreyPopov/gettyimages

 創業101年の歴史ある企業であれば、年功序列がある程度、温存されているのは仕方あるまい。だが、現在のパナソニックにまん延する停滞感が、人事の硬直性や経営上層部の劣化から生まれていることは否定できない。現状に安住していると、変革する力を失ってしまう。

 パナソニックは悪循環に陥っている。前述の通り、労働生産性の低い幹部であっても、一度管理職になってしまえば高給取りになれる。年収1500万円の“働かないおじさん”が滞留すると上位のポストが詰まり、若手の登用が進まない。結果として、経営層の新陳代謝が滞っているのだ。

 また、パナソニックには横並びのこの賃金テーブルしかないため、社外から年収2000万~5000万円クラスの高度人材や経営人材を一本釣りで獲得しようとしても賃金のハードルが立ちはだかる。

 こうした大企業病、老化現象ともいえる悩みを最も問題視しているのが、他ならぬ津賀一宏・パナソニック社長である。社内ブログでは、こう心境を吐露している。

「現在の執行役員の年齢層も課題だと感じています。社長になって以降は可能な限り、積極的に若い人材を役員にしたいとの思いで登用を進めてきました。しかし、硬直的な現行制度の中では年月とともに高年齢化が進んでしまい、多様性が失われていると言わざるを得ません。これでは、変革に向けて刺激的な議論を呼び起こすのは、なかなか難しいと思います」

 パナソニックの「老衰」をストップさせるため、津賀社長は大胆な人事改革に着手した。