混沌とした中東情勢、日替り相場を乗り切るための「3つの格言」米国とイランの関係は落ち着きを取り戻しつつあるが、金融市場は混乱の中にある。不確実性が高い状況を、投資家はどう乗り切ればいいか(写真はイメージです)Photo:PIXTA

 2020年の金融市場は波乱の幕開けとなった。今年最初の取引となった1月2日のNYダウは、330ドル高と好調なスタートを切ったものの、米国防省がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を空爆により殺害したと発表したことで、市場の楽観ムードはたちまちかき消された。

 翌3日のNYダウは一転して233ドル安となり、原油や金価格は急騰。米10年国債利回りは一時1.8%割れまで低下(価格は上昇)した。日本でも6日の大発会で、日経平均株価は451円安のスタートとなった。足元ではやや落ち着きを取り戻しているとは言え、金融市場は今も混乱の最中にある。

いつものトランプ流?
安易な楽観論は禁物

 トランプ大統領が誕生してからの3年間、これまでも同大統領による気まぐれなツイートや突発的なニュースが市場を揺るがしてきた。しかし、その多くはトランプ流の交渉戦術で、最終的には何らかの合意に至り、相場が急回復することの繰り返しだった。

 今回も8日にイランがイラクの米軍駐留基地にミサイル数十発を撃ち込んだが、トランプ大統領がその後の会見で反撃を明言しなかったことで、NY株式市場は反発し、ナスダック総合指数は史上最高値を更新している。まさに「突発事件は売るな」の格言通りである。地政学リスクに反応するように組まれたアルゴリズムもさぞや苦戦していると見られ、昨年はグローバル・マクロ戦略のCTA(商品投資顧問)の閉鎖が増加した。

 しかし、今回も何事もなく事態の収拾が図られると考えるのは早計だろう。本格的な開戦には至らないとの見方に立つ中東の専門家でも、突発的な衝突から中東全域を巻き込んだ有事に発展するリスクシナリオを否定できないという。

 現在の米政権の顔ぶれを見ると、マティス元国防長官のように戦争の悲惨さを知る軍経験者が閣僚を去り、トランプ大統領を抑止できる人間が見当たらない。イラン政府がウラン濃縮を無制限に再開すると宣言したことで、イスラエルが先制攻撃に踏み切る可能性も否定できない。

 今回のようなボラティリティが出た後は、市場の沈静化に少なくとも2~3カ月程度の時間を要するのが経験則だ。当面は不安定な状況が続くと想定しておくべきで、「目先感で相場を張るな」という格言を肝に銘じておきたい。そのような不確実性が高い状況を、投資家はどう乗り切れば良いだろうか。ここでは3つの相場格言を通じて、投資戦略を再点検する指針としたい。