証券大手2社がインサイダー情報を漏らしていた事件。両社は、トップの減給や引責辞任で事実上の終結宣言をした。しかし週刊ダイヤモンドは、大和証券の内部資料を入手し、大和が公表した調査報告書の要旨からはうかがい知れない情報のやりとりが判明。この問題の根深さが浮き彫りとなった。
「うわさベースですが、夏から秋にかけてファイナンスが出てくるとの話があります。日本板硝子の株価が下がっています」
「盆明け以降の資金調達について、要注意銘柄の中で、『イタ』には気を配っておいたほうがいいです」
「日本板硝子のファイナンスに関するうわさについて、社内で同僚とかがしゃべっていました」
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2010年に行われた日本板硝子の公募増資をめぐる大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)の増資インサイダー取引事件で、本誌は大和関係者から、顧客などとのやりとりを記録した内部資料を独自に入手した。同社は経営トップの減給など軽い処分で事件の幕引きを図ろうとしているが、資料に記された生々しい会話記録を読む限り、元社員1人に責任を押し付けたまま、事件を終結させることには大きな疑問が残る。
7月27日、大和証券グループ本社はインサイダー問題の責任を取る形で、鈴木茂晴会長、日比野隆司社長ら役員3人の報酬を3カ月にわたり10%減額するなどの社内処分を行うと発表した。また、処分と同時に公表された専門家による調査報告書の要約版では、未公開情報の取り扱いをはじめ、社内の情報管理を徹底することなどを柱とする再発防止策を説明。さらにあらためて元社員であるドイツ人のホヘンバーグ氏が情報を漏らしたと認定した。
一方で、ホヘンバーグ氏以外の社員も事前に公募増資に関する情報を推察し、顧客にほのめかしていたことも認定したが、顧客が日本板硝子の株式の売買を行っていたことが確認できず、インサイダー取引ではないとされた。加えて、「組織的に情報を顧客に提供していたとの事実は認められない」と判断し、組織ぐるみの関与については否定した。