全世界が危惧する
中国の「隠ぺい体質」

 SARS禍で日本人駐在員を最もパニックに陥れたのが「中国政府の隠ぺい体質」だった。2002年11月に広東省で流行していたのをひた隠しにし、実態を公表したのは翌年4月のことだった。このときすでにSARSは中国国内で爆発的に拡大しており、中国は世界中から非難を浴びた。

 今回も感染が拡大する中で、この新型肺炎にかかわる情報の中には、当局によりわずか数分で消されるものもある。武漢市では「デマを飛ばした」との嫌疑で8人の一般市民が調査の対象になった。社会秩序を乱すという理由で、インターネット上に出回る“デマの駆除”に当局が躍起になる中でのことだった。

 ちなみに、中国では近年、SNSでの“うっかり発言”が当局によりデマと捉えられ、拘束につながる事態が相次いでいる。2018年、山東省で洪水が発生し、これをきっかけに伝染病が蔓延するのではないかとチャットで発信した女性が、いきなり当局からの拘束を受けた。本人にその気がなくても“濡れぎぬ”を着せられる事例はこれまでにも数多くあった。

 ところが、習近平国家主席が「全力で新型肺炎を抑え込む」という重要指示を出した1月20日から風向きが変わる。これを境に関係当局は「情報開示」に態度が変わり、拘束された8人についても、友好的に調査が進められ処罰が与えられることはなかった。

 北京で事業を営む男性によれば、「デマの疑いがかかれば当局に捕まるだけに、みんなSNSでの発言には慎重でした。ところが、20日以降は新型肺炎の話題は“解禁同然”になったようで、さまざまなコメントが見られるようになりました」と言う。

 だが一方で、上海の商社勤務の女性はこう言う。「『新型肺炎に罹患した武漢市衛生健康委員会の副主任席が行方不明になっている』という情報が、ものの5分でインターネット上から削除されたのです。デマだから消されたのか、あるいは真実だから消されたのでしょうか」――。

 真実の報道が常に規制されてきた中国では、ウソだといわれ、消された情報が真実であることの方が多い。ちなみに上記の情報については「真実ではない」という火消しの報道が相次いでいる。

 中国では新型肺炎の話題が“解禁同然”の空気を醸し出しながらも、不都合な情報のもみ消しが続けられている一面もあり、これが、かえって一般市民の混乱を招くことにもなっている。

 SARS禍が与えた最大の恐怖は、中国のこの“隠ぺい体質”だった。果たして中国はこれを変えられるだろうか。17年の時を経てもなお、中国は同じ轍を踏むのではないかと全世界が緊張を高めている。