「マヌケ」という言葉は、「バカ」と混同されがちだけど、「マヌケ」という言葉を使っていたら人間関係も仕事関係も良くなっていくし、マヌケであればあるほど運はたまっていくよ!
そんな、欽ちゃんのあったかい言葉が詰まった本『マヌケのすすめ』が、1月29日に配本されます。この連載では『マヌケのすすめ』から、とくに心に響く部分を抜粋して、萩本欽一さんの言葉を紹介していきます。(撮影/榊智朗)
「バカ」は言った側と言われた側の距離を遠ざける言葉だけど、
「マヌケ」には近づける働きがある。
「バカ」と「マヌケ」は、意味も使う側の気持ちも違うわけだから、言われたほうの反応も同じだとよくないよね。
何となく、どちらも「すいません」と謝っておけばいいように思えるけど、そうじゃない。
「マヌケ」に「すいません」は間違いです。
「お前、バカなことするんじゃないよ!」って言われたら、神妙な顔して「どうもすいません」と返すのが正解。
なんか迷惑をかけることをしたんだし、相手は腹を立ててるわけだから、そうやってお詫びと反省の気持ちを伝えなきゃいけない。
でも「お前、ほんとマヌケだね」って言われて、神妙な顔で「どうもすいません」と謝っちゃったら、相手に失礼です。
せっかく、あたたかい気持ちで「俺の範囲では許せるよ」と言ってくれているのに、その気持ちを踏みにじることになる。
「マヌケ」って言われたときは、ニッコリ笑って「やっちゃいました! 気をつけます」ぐらいがいいね。
どうせなら、もう二度と失敗しませんっていう覚悟を示すために、「今度やったら布袋(ほてい)町の大黒通りの恵比寿アパートに引っ越して、たくさんの神様に寄ってたかって喝を入れてもらいます!」
そんなマヌケな返しをするのもいいんじゃない。
「マヌケ」って言ったほうも、よくわからないけど、どうやら伝わったみたいだなと思って満足すると思うよ。
「バカ」は言った側と言われた側の距離を遠ざける言葉だけど、「マヌケ」には近づける働きがある。
「すいません」なんて返してその利点を台無しにしたら、もったいないよね。
関西のほうでは「バカ」じゃなくて「アホ」って言うでしょ。
「アホ」は「マヌケ」に近いんじゃないかな。東京生まれのぼくが、関西の人の「このアホ」って言っているのを聞くと、「ああ、相手を許してるんだな」って思っちゃう。
本当はどうかわからないけど。
この本をきっかけに、辞書も「マヌケ」の意味や使い方の説明を変えてほしいね。
「バカ」と同じ意味で使っている限り、世の中はどんどん息苦しくなっちゃう。
「マヌケ」の正しい使い方が広まったら、言うほうも言われるほうもずいぶん救われる。
昔は「ヤバイ」ってマイナスの意味の言葉だったんだけど、最近は変わってきた。
「このカレーライス、ヤバイ」とか、プラスの意味で使われてる。
言葉の意味って、けっこう変わるんだよね。
そのうち「マヌケすぎてヤバイ」が、最高のホメ言葉になるかもよ。
(本原稿は、萩本欽一著『マヌケのすすめ』からの抜粋です)
*撮影協力/駒澤大学