ゆうちょ銀行のトップとその秘書の人事について、合法性や妥当性を問う炎が国会で燃えている。焦点の人物は、旧大蔵官僚出身で金融庁長官を経て、ゆうちょ銀行社長に天下っている高木祥吉社長と、同社長が大蔵省・金融庁時代から重用してきたという女性秘書の2人だ。
郵政関係者の間でも「問題の多い人事。日本郵政グループの大半を占める郵政省時代からのプロパー職員のやる気をそいでいる。巨大企業を蝕む弊害の大きさは計り知れない」との批判が絶えないという。ただ、高木氏のような落下傘経営者が経営を担い、プロパーを比較的要所から遠ざける傾向は、現在の日本郵政グループに共通している。それだけに、高木問題は、早くも来年3月に迫った郵政民営化の「3年後見直し」へ向けた前哨戦としても注目されている。
国家公務員法違反の
疑いがある高木氏の就職
「承認申請がなかったからといって違法な手続きになったかどうかということにつきましては、もう少し検討してみないと何ともお答え申し上げられません」――。
高木氏がゆうちょ銀行社長に就任する布石となった平成18年1月23日付の日本郵政株式会社の副社長就任人事、つまり、日本郵政への天下り人事について、監視すべき立場にある谷公士人事院総裁が、その違法性を否定しない、この衝撃的な答弁を行ったのは、今から6ヵ月以上も前の昨年1月1日の参議院総務委員会での“事件”だ。
新聞やテレビはフォローしなかったが、当時、質問に立ったのは、国民新党の長谷川憲正議員である。実は、長谷川議員も谷総裁も、郵政官僚の出身で、2人は旧知の間柄だ。しかも、攻める長谷川氏には、前日の衆議院総務委員会における谷総裁の松野頼久議員への答弁という格好の予習材料まであった。相手の苦しい立場を知り尽くした長谷川氏の追及に、官僚出身者には珍しく詭弁を弄さない真直ぐな性格が評価されて、退任後、人事院総裁に抜擢された谷氏が、ぎりぎりの答弁に追い込まれたというのが、この場面だったのである。
もう少し、この答弁劇を解説すると、国家公務員法103条は、安易な天下りを規制するため、「人事院の承認を得ない限り、離職後2年間は、その離職前5年間に在職した国の機関などと密接な関係にあった営利企業に就職してはならない」と規定している。
そこで、高木氏だが、同氏は平成14年7月12日から同16年7月4日まで金融庁長官の職にあり、その後も同18年1月22日まで政府の郵政民営化推進室副室長の座にあった人物だ。