ICT(情報通信技術)を活用した遠隔医療は、今回の新型肺炎でも感染拡大防止と専門家による診断のために武漢に設置されるなど改めて注目を集めている。日本の医療現場でも遠隔医療は、ずっとその必要性こそ叫ばれるものの、あまり普及していないのが実情だ。その一方で、北海道の旭川医科大学は世界をリードする立場にある。同大学で遠隔医療の研究を究め、そのパイオニアとして世界的に有名な吉田晃敏学長に、同大学の遠隔医療の取り組みや現状、課題などを聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
遠隔医療の先頭も
後塵を拝するのも日本
2015年に厚生労働省が遠隔診療を事実上解禁する旨の通達を出したことをきっかけに、日本の遠隔医療は大きな進展が期待されていた。ところが、厚生労働科学研究「ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究」(2018~2019年度)の一環として実施された調査では、オンライン診療、オンライン医療相談を行っていると回答した医療機関はそれぞれ0.3%と0.9%で、全体のわずか1.2%にすぎないことが分かった。
また、オンコール医師(急患時に院外から対応する医師)への急変や患者情報の送信手段は「電話での情報提供のみ」が67%と最も多く、続いて「求めがあればBYOD(医師が持つスマートフォンなどのデバイス)へ送信」(12%)、「登録機材でアクセス可能」(8%)だった。