聴診器は医師を象徴するほどの医療器具だが、実は誕生以来、ほとんど変化していない。そんな聴診器が離島やへき地などの医療現場にイノベーションを起こす最先端の医療器具として進化しそうだ。画期的な「超聴診器」の開発者として注目されている循環器内科医で医療系ベンチャーの代表も務める小川晋平氏を取材してみた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
診察の基本、聴診器に
200年ぶりのイノベーション
「日進月歩」といわれる医療の現場で、1816年に誕生して以来、200年以上もの間基本構造が変化していない医療器具がある。聴診器だ。そう、内科や健診を受診した際、必ず胸や腹部、背中等にあてがわれるアレ。
医者にとってのアイコンでもある聴診器は、心音、呼吸音、腸のぐる音(「ぐる音」は、腸が食物を消化する際のぜん動運動にともなって、腸の内容物とガスが移動して発生する、ゴロゴロという音)、血管雑音といった「身体の声」を聴くことで異常を発見できる、いわば診察の基本中の基本。しかも、レントゲンのように放射線被ばくの心配もない、安全この上ない検査器具なのだが、あまりにも基本的だからだろうか、長いこと、ほとんど手を加えられることなく今日まで来てしまった。
そんな聴診器に、イノベーションを起こす存在として注目されているのが、循環器内科医で医療系ベンチャーの代表も務める小川晋平さんだ。
(心音がもっと精緻に、しかも素早く簡単に聴診できるようになれば、救える命が増えるのではないだろうか)
大学病院で働いていた小川さん(36歳)は、患者を診察しながら常々感じていたという。