『週刊ダイヤモンド』2月29日号の第1特集は、「地震、水害に強く、資産価値が下がりにくい マンションランキング1410」です。天災が多発する昨今、災害に強いとされてきたマンションの資産価値が激減する事態が頻発している。川崎市の武蔵小杉で被災したタワーマンションでは、住民に新たなコスト負担がのしかかってくることは確実で、逗子市の崩落事故では敷地の所有者の住民に損害賠償責任があると弁護士は指摘する。災害リスクをどう見抜き、どう対処したらよいのか。

逗子市の崩落事故の現場は
2011年に県から「土砂災害警戒区域」に指定

「何も言うなと言われています。……実際のところ、私たちも何も分からないの」――。そう言い残し、女性住民はオートロック付きのマンションに入っていった。

 ここは神奈川県逗子市の分譲マンション「ライオンズグローベル逗子の丘」。2月5日朝、マンション敷地の斜面が突如崩落し、通行中の県立高校の女子生徒(18歳)が巻き込まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 2004年に建てられたこのマンションは総戸数38戸。デベロッパーは、大京と当時提携していたグローベルス(現プロスペクト。07年に大京から離脱)で、管理会社は当初から変わらず大京アステージだ。

 横須賀土木事務所によれば、マンションは昭和40年代からあった社員寮の跡地に建てられたが、その際に地盤工事をした記録はないため、崩落した斜面やその下部分の古い擁壁は社員寮時代から存在したものをそのまま活用した可能性が高いという。

 問題は、崩落現場が11年に県から「土砂災害警戒区域」に指定されていたことだ。

 売主のプロスペクトは「取材は全て断っている」と口を閉ざす一方、大京の親会社であるオリックスは「管理会社として土砂災害警戒区域に指定されたことは把握していたが、崩落した斜面に対する専門的な点検業務は管理組合との契約に入っていない。毎月、目視では点検をしていたが、異常は見られなかった」とする。

「台風や地震で崩落したわけではないので
マンションの所有者全員か管理組合に責任がある」

 現地調査を行った国土交通省は2月14日、報告書(速報)を公表。「日当たりの悪い斜面のため(地盤を固める)植生が弱く、風化により崩落した」などと結論付けた。国交省の示した事故原因は、同じような斜面を持つマンションならば他でも起こり得ることを示している。

 実際、土砂災害警戒区域に所在する物件は少なくなく、大手デベロッパーや管理会社はこの前代未聞の事故に度肝を抜かれて、自社物件の総点検をこっそり行っている。

 だが、最終的に事故の責任はマンションの所有者にある。「台風や地震によって斜面が崩落したわけではないので、マンションの所有者全員か管理組合が占有者として責任を負うことになるだろう」と話すのは、不動産に詳しい「麹町パートナーズ法律事務所」の神戸靖一郎弁護士だ。

 そのうえで、「賠償額は被害者の年齢から7000万~8000万円。遅延損害金や弁護士費用も含めれば、総額1億円を超える可能性もある。もし賠償責任保険が出なければ、所有者全員で自己負担することになるだろう」(神戸弁護士)という。

 マンション所有者の負担はそれだけにとどまらない。不動産関係者は「人命を失うような事故が起きたことで、物件の資産価値の大幅な低下は避けられない」と、口をそろえる。

「重ねるハザードマップ」を使えば
ピンポイントで災害リスクを調べることができる

 逗子のケース以外にも、近年、災害リスクによって一夜にして資産価値を棄損してしまうマンションが増えている。

 昨秋に首都圏を直撃した台風19号で大きな被害に遭った武蔵小杉のタワーマンションの住民は、今後、新たなコスト負担がのしかかってくることを予見している。「負担増は皆、覚悟しているが。これだけ人がいると合意形成が大変だ」(被災したタワマンの住民)

 不幸にも、タワマンが林立する武蔵小杉では、被災した物件はごく一部にもかかわらず、武蔵小杉全体のブランド力が低下する事態となっている。

 災害に強いとされてきたマンションが、被災を機に資産価値を一気に損なう事態が頻発している。では、災害に弱い物件を見抜くには、どうしたらよいのか。

 崩落事故があった神奈川県逗子市のマンション周辺は、戸建てのみならず学校や集合住宅も多いごく一般的な住宅地だ。しかし、災害ハザードマップに照らし合わせると、まったく別の姿が浮き彫りになる。

 国土交通省がウェブサイト上でサービスを提供する「重ねるハザードマップ」( https://disaportal.gsi.go.jp/index.html )は、国や自治体などの防災情報に基づき、ピンポイントでその場所が抱える災害リスクを誰でも地図上で調べることができる。「土砂災害」だけでなく、「洪水」や「津波」といった様々な災害リスクを重ねられるため、非常に使い勝手が良い。

 ~図は事故のあったマンション周辺マップを「重ねるハザードマップ」で実際に表示したものだ。京浜急行電鉄逗子線「神武寺駅」の東側一帯は、事故現場を含めて「土砂災害警戒区域」ではない場所を見つけるのがむしろ困難なエリアだと分かる。

武蔵小杉の14棟のタワーマンション
明暗を分けた「低位地帯」と「地歴」

 昨年の台風19号では武蔵小杉に林立するタワーマンション全てが深刻な被害を受けたかのようなイメージがあるかもしれないが、14棟あるタワマンのうち、甚大な被害を受けたのは、「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」と「シティハウス武蔵小杉」の2棟に過ぎない。

 同じエリアに所在するにも関わらず何が明暗を分けたのか。武蔵小杉エリアの地図に国土交通省の「低位地帯」データと「治水地形分類図」を重ね合わせると、その謎が解ける。

 「低位地帯」とは、周辺部よりも標高が低く、排水が困難とされる場所。また、治水地形分類図は、その土地が過去にどのような場所だったのか記されている地図だ。

 ~図にあるように、深刻な被害を受けた2棟とも低位地帯にあり、うちシティハウス武蔵小杉は、かつては河川だったため水はけが悪いとされる「旧河道」の上に建てられていることが分かる。その一方で、浸水被害のなかった他のタワマンのほとんどは、低位地帯や旧河道の双方からから外れていることが見て取れるはずだ。

 もちろん、低位地帯であることや地歴が浸水のすべての原因ではないし、個々のマンションの設備や対策で被害の程度も左右されることは言うまでもない。

 それでも、所有物件や購入を考えている物件の災害リスクの度合いがわかれば、所有物件なら管理組合が管理会社などと対策を練ることができるし、購入を検討しているのであれば、リスクが高くても対応策を聞くことなどで購入の判断材料にできるはずだ。

資産価値が高く、防災面にも強い
中古マンションランキング

 「週刊ダイヤモンド」2月29日号では、災害に弱いマンションを見抜く「ハザード情報」活用術を紹介。防災強化に取り組むマンションのレポードや、火災保険や修繕積立金のチェック方法なども取り上げている。

 さらに、首都圏、愛知県、関西圏というマンションが集積する3大エリアを対象に、中古マンション市場で人気の高い、築浅で中規模以上、かつ過去3年間で実際に一定数の成約件数があった中古マンション物件を抽出。この条件をクリアした1410物件について、過去3年間の相場上昇率や各種の災害ハザード情報を物件ごとに調査した。

 資産価値が高く、防災面にも強い中古マンションはどこか――。全く新しい中古マンションランキングを作成したので、参考にしていただきたい。