日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」や新サービス「ペンギン村」の管理人を続ける、ひろゆき氏。
そのロジカルな思考は、ときに「論破」「無双」と表現されて注目されてきたが、彼の人生観そのものをうかがう機会はそれほど多くなかった。『1%の努力』では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)

そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――(こちらは2020年3月7日付け記事を再構成したものです)

自分でも勝てる場所はどこだ?

僕はいま、「4chan」という英語圏のサイトを運営している。

ひろゆきが「ここなら誰でも勝てる」と選んだ場所ひろゆき氏(撮影:榊智朗)

2ちゃんねると同じく、誰でも簡単に書き込めて、アカウントがないのが特徴だ。

アカウント制だとフェイスブックが世界一で、ユーザーアカウントを取って1人ずつサービスを増やしていく手法をとる。

そういうサービスを作りたい会社は世界中にたくさんある。

一方で、みんなが匿名でダラダラ書き込むようなサービスは、トラブルが起こりやすいし、やってもしょうがないと思われている。

その場所なら、競争が少なくて、「自分でも勝てる」と踏んだ

日本の人口が減るということは、日本語を使う人も減るということだが、英語圏に広げると違う。

長期的に見ても、英語を使う人がいなくなることは考えにくいので、英語圏の匿名掲示板は、ダラダラと続けていける。

ある程度、規模が大きくなってしまえば、何もしなくても回っていくので、努力は不要だ。

僕は、そういう仕事の選び方をしてきた。

頑張って手に入れるという選択肢を選んだ瞬間に、それは絶対に他の人に抜かれる。

バブルで大儲けした人たち

仮想通貨バブルの前に仮想通貨を買っていた人は、ハッキリ言ってしまえば、何も頑張っていない。

なんとなく買っていたものが、たまたま高く売れただけで、なんの努力もない。

何かを成し遂げるとき、「どう頑張ったか」が100%必要であると認識されがちなのだが、たまたま日本人で生まれたら、ソマリアで生まれるよりラクであるというレベルの話で、努力で変わる部分は、実はものすごく少ない

頑張りによってすべてを変えられる「努力が報われる社会」であれば、もっと優秀な人が出てきて日本はいい状態に変わっていたはずだ。

しかし、そうなっていない。

それなのに、なぜ努力神話があるのだろうか。

それは、ごく一部だけ、「努力できる」という才能を持った人がいるからだ

その才能があれば、あらゆる競争に立ち向かうことができ、突破し、次第に勝つことに慣れていく。

受験競争を勝ち抜いて東大に入ったり、弁護士や公認会計士などの難関資格を取ることができたり、一部上場企業などに入ることができる。

それもこれも、努力できる才能があるからだ。

そして、僕にはその才能がない。

人生にはハンデがある

努力できる才能がなければ、いくら頑張っても、正攻法では彼らに勝てない。

何かを成し遂げるために頑張らなければいけない場所を選んだ時点で、ちょっと頑張っただけでうまくいってしまう人に本気を出されたら、すぐに先を越される

正面突破の方法だと、ハンデのついた100メートル走をやらされているようなもので、絶対に勝つことができない。

だから、自分にとって頑張らなくても結果が出る場所に行ったほうが、絶対にうまくいく。逆説的な話だが、それが真理だ。

「競争のいらないところに張ろう」

これが、本書で伝えたいことのひとつだ。

たとえば、金持ちと結婚したらラクな生活ができると思う人がいる。

婚活パーティーで頑張ってしまうようなタイプだ。

金持ちと結婚してラクをするのが目的だったのが、いつの間にか自分磨きを一生懸命にする「間違った努力」に変わってしまうのだ。

たしかに、一部の人だけは確率的にうまくいく。しかし、大多数が結婚できないことに変わりはない。

努力はムダになり、結局、何も残らない。

そういうことが、この世にはゴマンとある。

後追いは儲からない

先ほどの仮想通貨の例でいうと、みんなが怪しんでいるときに張っていた人が勝ち抜けて、儲かっている人をマネして後追いした人は儲からなかった。

これは、他のビジネスでも似ている部分がある。

儲かるとわかった時点では遅い。

逆に、儲かってなさそうだけど、誰もやっていないところにこそ、チャンスが転がっていたりする

そこに賭けてみるのがいい。

一か八か全財産を賭けるのは勧めないが、失敗しても痛くない程度に張っておくのはいいだろう。

ひろゆき
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。新刊『1%の努力』(ダイヤモンド社)を刊行。