銚子電鉄 竹本勝紀社長Photo by Kazuhiko Kurabe

千葉県銚子市を走る「銚子電鉄」。ローカル私鉄ながら、名物のぬれ煎餅やエンタメ鉄道など、独自のアイデアで鉄道ファン以外からも注目を集めている。一方で、社長の横領事件や震災による観光客激減など、幾度も廃線の危機に直面してきた。厳しい経営状況を打開すべく今も奮闘する竹本勝紀社長が、銚電のたぐいまれなるサバイバル経営を振り返る。(構成/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)

車両は「中古の中古」
銚電のサバイバル経営とは

 銚子電気鉄道は、銚子市のJR銚子駅から犬吠埼付近の外川駅までを結ぶ片道19分の路線です。全長わずか6.4kmのなだらかな道のりですが、経営のほうは長年、険しい山道を走り続けています。

 そもそも、鉄道事業にはお金がかかります。たとえば、3年に1回実施される車両の検査には、1編成当たり1500万円ほどかかります。お金がないので、車両も中古の中古。電車の法定耐用年数は13年といわれる中、銚電では一番新しい車両で57年モノです。そんなビンテージ電車ですから、あちこち修理が必要です。さらに、車両だけでなく線路や信号機など、あらゆる設備の維持にコストがかかります。

 厳しい鉄道事業を支えているのは、副業で始めたお菓子の製造・販売です。「およげ!たいやきくん」ブームにあやかって、1976年にたい焼きを売ったのが始まりでした。そして1995年、地元の名産でもあった「ぬれ煎餅」を売り出したところ、これが大ヒットしたのです。

 テレビ番組に相次いで取り上げられたこともあり、3年後の1998年には鉄道事業の売り上げを上回りました。以来、煎餅の製造・販売が本業です。今でこそ多くの鉄道会社が不動産業でもうけていますが、銚電は何十年も前から非鉄道事業でもうけていた最先端企業だった、とは言えないでしょうか……。