防犯・防災、そして不動産価値の向上という観点からも、コミュニティの重要性がクローズアップされている。よいコミュニティがあれば新しい生活に何か期待が持てそうな気がする。しかし、これから住宅を購入しようとする人は、近所にどんな人が住むのか、住んでいるのかがわからない。何に着目すれば、よいコミュニティを得られるのだろう。
楽しみながらつながる
マンションは一つの街
デベロッパーの仕事はマンションを造って売ることであり、買い手からすれば入居後は縁遠くなるのが普通だ。しかし、最近のデベロッパーには「コミュニティ形成」に力を入れるところが増えた。当然、入居後も付かず離れずの関係が続いていく。
マンションブランド「オーベル」などを展開する大成有楽不動産は、2007年頃からコミュニティ形成に向けた取り組みを本格化させた。
まず、東京・南千住の「東京フロンティアシティ」(1313戸)では「下町文化講座」「親子工作遊び教室」「ヨガ講座」といった多彩なカルチャー講座を開催し、謝礼などは同社持ちで講師を招いた。約1年間展開し、内容はおおむね好評だったが、講師との契約期間の終了とともに、講座自体も継続されることなく終わった。現在は、住民主導のサークル活動に移行している。
「我々、事業主が退いた後の難しさを感じましたが、実際に行動したことで、住民の方々のニーズがどこにあるかをつかめたことは成果となりました」(大成有楽不動産・土肥健作氏)
続いて、千葉・実籾の「ユトリシア」(1543戸)では、敷地内に体育館を造った。ここは利用率が高く、現在20以上の運動系サークルが活動している。有名なダンススクールの先生が講師を務めるジュニアチアダンスのサークルは女の子に人気があり、フットサルやマラソンのサークルには若い男性が多く参加する。
子どもが敷地内で運動することは、親にとって大きな安心要素。さらに、この体育館には東日本大震災時に多くの人が集まったことに注目したい。特に避難指示はなかったが、自然と住民の足が向いたのだという。
「単に『体育館を用意しました』では使われません。私たちが考えているのは“箱”ではなく“場”づくりです」(土肥氏)
同社は今年4月に、デベロッパーである有楽土地と、管理会社である大成サービスが合併して生まれた会社。そのため、購入前から入居後までの一貫したコミュニティ支援という新たな流れができた。
「例えば、親子で参加するサークル活動では、子どもを通じて輪ができ、会話が弾んでいく様子が見られます。場を提供すれば、自然とコミュニケーションが始まり、コミュニティが生まれるんですね。そこで、私たちは管理会社や管理組合と協力しながら、入居後の約1~2年間にアイデアをひねり、人を出し、時に費用を負担するなどして、コミュニティ活動が『根付く』サポートをします。自然な形で、住民の方が自主的に活動を継続していただけるまでにすることが目標です」(土肥氏)