中国・武漢のウイルス研究所の科学者たちは、拡大が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への中国の対応の最前線に立たされてきた。しかし彼らの活動は、致死率の高い病原体の研究が世界各地に広がることに伴う危険性について、関心を高めることにもなった。中国科学院武漢ウイルス研究所は、今回の感染拡大を引き起こした病原体が、新たな、あるいは未知のコロナウイルスであることを中国で最初に突き止めるという成果に貢献した。これは生命科学を含むハイテク分野で欧米諸国のライバルになることを目指す中国政府にとって歴史的成果だった。しかし、中国の近代史の中で最大の感染症大流行の震源地である武漢に同研究所が位置するという事実は、この研究所を別の怪しげな説のターゲットにもしてしまった。その説とは、研究所内での何らかの事故が原因で、最初の人へのウイルス感染が起きたというものだ。中国国内だけでなく国際的にも著名な科学者らは、こうした見方を否定し、このウイルスは野生動物、恐らくコウモリが持っていたものであり、武漢の食品市場から人への感染が広がった可能性があると説明している。
病原体の研究施設は安全か 新型コロナで高まる懸念
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