企業が学生にアクセスする形は多様化している。学生は利用無料、大学のそばで運営され、企業と大学生の少人数交流会を随時開催する、「知るカフェ」を取材した。(ダイヤモンド・セレクト編集部)
東京都港区にある慶應義塾大学三田キャンパスの向かいのビルの2階にあるカフェ。店内には木目調のテーブルと椅子が並び、暖色系のやわらかい照明がリラックスした雰囲気を醸し出している。平日の午後3時。ちょうど3限が終わった時間帯で、学生たちはめいめいノートパソコンや教科書を広げたり、グループで談笑したりしている。Wi-Fiと飲料が無料で、まるで大学のカフェテリアのような居心地のよい空間だ。
ここはエンリッションが展開する大学生限定の無料のカフェ、「知るカフェ」だ。なぜ無料かというと、160社近くの企業スポンサーがついているから。企業側はスポンサーとなることで、後述するような交流会など、大学生とのリアルな接点を持つことができる。
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東京大学、早稲田大学、慶應大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、同志社大学、九州大学などの近くに18店舗、インド各地のインド工科大学近くに7店舗を展開する。大学生向けのキャリア支援カフェのはしりで、最大規模を誇る。運営も近接する大学の学生が行っている。
ある利用者は、「2年前から週1、2回、空きコマや自習のときに利用している。この間交流会にも参加した」と言う。
知るカフェは、普段は学生限定の無料カフェとして利用できる。一方で、毎日のように少人数の企業交流会が開催されており、予約すれば自由に参加できる。取材に訪れた日も、店の一角で就職相談のような交流会が行われていた。
企業がスポンサーとはいえ、デジタルサイネージとモニターにスポンサー企業の広告が静かに無音で流れ、少し奥まったところに各企業のパンフレットの入った引き出しがあるくらいで、ことさらスポンサー企業が前面に出ているわけではない。
カフェで随時開催される企業交流会は就活生向けの説明会やインターンシップのようなものから、1、2年生向けに「自己分析」「コンサルとは何か」といった広いテーマ設定のものまでさまざまだ。知るカフェのアプリに情報がアップされ、簡単に予約することができる。1回につき、参加者5名で、1時間程度。同じ時間帯に最大3社まで同時開催される。
店長の慶應大文学部2年の中田駿さんは「学生は普段の学校生活では、企業の人と話す機会はほぼない。ここに来ることで、リアルに働く人を知る初めての機会になっている学生も多いのではないか」と話す。