セーフティネット住宅賃貸住宅への入居が困難な単身高齢者の受け皿になるべく設けられた「セーフティネット住宅」は、苦戦を強いられているようです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 急増している単身高齢者たちは、賃貸住宅への入居を断られやすい。低所得者や障がい者、外国人、シングルマザーたちも希望する住まいになかなか入れない。「家賃滞納や不審死、孤独死のリスクがあり、厄介な人は不安」という大家の本音が横たわる。そこで国が新たに住まいの制度を設けた。

 2017年10月25日から始めた「セーフティネット住宅」である。「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」を改正して作った。高齢者や月収15万8000円以下の低所得者、障がい者、被災者、ひとり親世帯を「住宅確保要配慮者」(要配慮者)と位置付け、一般住民も入居できるが、要配慮者を拒まない賃貸住宅とした。

 要配慮者には、国交省政令で外国人やDV被害者、犯罪被害者、矯正施設退所者なども定めた。また、自治体が新婚者、LGBT、UIJターンによる転入者などを含めることができる。

 大家が都道府県、中核市、政令市に登録すると、住所や間取り、家賃、面積などの詳細データがウェブサイト上で公開される。耐震性や25平方メートル以上などの条件がある。入居希望者はこのサイトを検索し、大家に直接申し込むという仕組みだ。

 住宅困窮者向けには公営住宅があるが、高倍率で入居難が続く。一方、全国的に空き家、空き室は増加傾向にある。そこで「ヒトとモノの課題を同時に解決できる」との思惑で国交省が立案した。アイデアは素晴らしかったが、施行後2年半の現在では、「失敗施策」の烙印を押されかねない状態だ。なぜつまずいたのか。

登録戸数は目標のわずか15%
たった1社で6割を占める現状

 国は改正法施行3年半後の2021年3月までに17万5000戸を登録目標に掲げた。ところが、3月16日時点での登録はまだ2万6026戸にとどまる。目標のわずか14.9%である。1年後の目標達成は無理だろう。