変革の時代における「プロ経営者」の役割を、横浜DeNAベイスターズ初代社長の池田純氏が考察する連載の第3回。今回は、変革の初期段階でプロ経営者がやるべきことを掘り下げていく。従業員を知り、組織を変え、仮説を立て、プランを提示し、「反変革派」に適切に対処する──。それらの取り組みの具体的な方法を経験に基づいて池田氏が語る。
人を知り、組織を変える
新しい社長の座に就いてからすぐにやるべきことは、全ての従業員と面談することです。目的は、その会社の本質を知ることと、その会社を構成しているのがどういう人たちであるかを把握することです。
面談といっても、堅苦しいプログラムが必要なわけではありません。その人がこれまでどんな仕事をしてきたのか、何を大切にしているのか、自分が関わる現場にどんな課題があるのか、これからどんなことをやっていきたいのか、この会社にはどんな魅力があるのか──。そういったことを雑談のように聞けばいいのです。
全ての従業員と面談するのは骨の折れる作業ですが、本当に重要なのはその後です。面談の内容や印象を踏まえ、変革のビジョンに賛同し同じ方向に向かってくれそうな人は誰で、リーダーになれそうな人は誰かを考え、その考察を基に組織のスクラップ・アンド・ビルドを行わなければなりません。もし、変革のための組織をつくるための人材が足りないのであれば、外部にその人材を求めることが必要です。
この組織づくりが、最初の段階で最も難しく、また最も重要な取り組みです。戦って勝てる組織をつくり、その組織のパフォーマンスを上げていくことが、ある意味ではプロ経営者の役割の全てだからです。組織をゼロからスクラップ・アンド・ビルドができるのは、外部から来た、既得権益を破壊できる、忖度や必要以上の配慮や保身に関心ゼロな、プロ経営者しかいません。
従業員と話をすると、往々にして、現場の人たちが本当に働く意欲にあふれていることがわかります。出世したい、偉くなりたいということではなく、いい商品を作りたい、素晴らしいサービスを生み出したい、顧客を喜ばせたいという思いが働く推進力になっていることが分かります。それらが生かされないのは、現場の従業員の多くが不満を感じているのは、そのような「思い」を実現させられる組織体制がないことなのです。