国内の連帯は強まるが
国外には遠心力が働く懸念
先進国では過去30年間、グローバリゼーションが進展するもとで経済格差が拡大し、政治的分断も広がった。
今回の新型ウイルス危機は、社会のあらゆる階層に多大な打撃を与えるが、そうだとすると、1930年代の大恐慌と同様、人々が共同体的な紐帯に強く目覚め、所得再分配を見直したニューディール的な政策が選択される可能性はないのだろうか。
その一方で懸念されるのは、国境の内側で求心力が働くとしても、国境の外側に対しては強い遠心力が働き、むしろ国際的な分断がさらに広がることだ。
グローバル化で中間層が瓦解
所得再分配機能が弱体化
この30年余り、グローバル化の進展とともに、オフショアリングが進んだ。1990年代以降、先進国の製造業が生産工程を新興国にシフトさせたのである。
かつては、工業国と言えば先進国を意味していた。工業化はフルセットで行う必要があり、新興国が工業国となるのは相当に難しかったためだ。