新型コロナウイルスの感染拡大が日本国内で顕著になって以降、医師の処方箋が不要な「大衆薬(OTC医薬品)」がおおむね好調だ。大ヒット商品に至っては前年比5倍強と神懸かり的な状態。病院受診の回避、感染対策、マスク購買目的でドラッグストアや薬局に来店したときの“ついで買い”などが背景にあるようだ。特集『日本企業 緊急事態宣言』の#5はプチバブルの現状と、大衆薬メーカーが喜んでばかりいられない事情を報告する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
新型コロナウイルスの余波で
にわかに存在感を増す大衆薬
新型コロナウイルスの余波で、ドラッグストアの主役になっているのはマスクだけではない。健康補助食品やサプリメントに押されて影が薄くなっていた大衆薬(OTC医薬品)にも1月末以降、スポットライトが当たっている。
念のため大衆薬とは何かを説明すると、医師の処方箋が必要な医療用医薬品とは違って、ドラッグストアや薬局で消費者自らが選んで購入できるクスリだ。飲み薬、湿布薬、薬用ボディーソープ、消毒剤など、製品は多岐にわたる。
国内で人から人へ感染した可能性がある症例が初めて報道されたの1月28日。市場調査会社インテージヘルスケアによると、その前後から風邪薬関連や感染予防関連の大衆薬が売れ始め、販売金額で「前年比増」が顕著に表れるようになった。
実は2009年の新型インフルエンザ流行や11年の東日本大震災発生の際も大衆薬の“プチバブル”は発生したが、それぞれ1~2カ月程度で終焉した。
正確にいうと新型インフルエンザの際は、国内感染者初確認の直後と国内死亡例初確認の直後の、計2回のバブルが起きている。
今回の新型コロナウイルスは終息の見通しが立たない上に、全国に感染が広がっているため、バブルの“規模”は過去のケース以上となる可能性が高い。