新型コロナウイルスの感染拡大で、ビールメーカーが苦境に陥っている。外出自粛の影響で、業務用が大不振。頼みの家庭用も、利幅の大きいビールから安価な新ジャンルへの消費のシフトが止まらない。特集『日本企業、緊急事態宣言』の#6では、コロナ禍拡大で窮地に立たされたビール業界についてレポートする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
スーパードライ28%減、キリン24%減…
コロナでビール大手の3月実績が総崩れ
「取りあえず、ビール!」――。ビールメーカーを支えてきたのは、飲み会でおなじみのこの掛け声だった。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。外出自粛要請で大ダメージを受けているのが、飲食店だ。窮地に陥っている都内のバー経営者は、「お手上げ状態。このままいけば、運転資金が枯渇してしまう」と焦りを募らせる。
そして飲食業界の不振が飛び火しているのが、ビールメーカーだ。3月のビール販売数量は各社とも軒並み激減した。
アサヒビールは主力ブランド「スーパードライ」が28%減。競合のキリンビールは24%減、サッポロビールは18%減、サントリービールに至っては35%減と総崩れの状態だ(いずれも前年同月比)。
飲食店向けの業務用市場は、「ビール市場の約半分」(業界関係者)と大きなウエートを占めており、これがビール大手の販売数量が激減した最大の要因だ。
業務用市場が苦境に陥る一方、頼みの綱は家庭用市場である。ウェブ上でユーザー同士をつなぐ「オンライン飲み会」の流行も後押しし、外出自粛により家飲み需要が高まったとされている。家庭用ビールの主力となるのは缶商品で、こちらで業務用の落ち込みをカバーしたいところだ。