為替市場では、日本から見えにくいところで緊張が高まっている。ドル円相場は、3月にリスクオフで101円台へ急落してすぐ、喫緊のドル流動性確保の買い殺到で112円近くまで反発。その後しばらく108円前後で小康した。株式市場もやや値を戻し、一息ついた。
しかし、5月には、かつて見たことのないような経済・企業データの悪化が次々と明らかになり、6月には、総動員された政策が行き届いているかが問われよう。市場が持ちこたえられるか、正念場は続く。
為替市場の緊張は、ドル円を見ていると分からない。ドルも円もコロナショック下の為替市場では、スイス・フランやユーロと共に最強クラスにあり、優劣の付きにくい微妙なバランス上にある。
緊張に晒されているのは、対外債務の大きい新興国・資源国だ。資源国は需要急減が直撃した商品相場下落の痛手も重なる。新型コロナウイルス感染が欧米で広がった2月下旬以降、メキシコ、ブラジル、南アフリカなどの通貨は対ドルで約20%下落した。
通貨安は新興国の債務負担をかさ上げし、経済を追い詰める。新興国でコロナ感染が広がれば、医療体制の不備、経済対策余力の不足から、社会不安、政治危機に陥る恐れも小さくない。ドルの堅調は、脆弱化する新興国・資源国を含む国際投資からの資金引きあげ(=ドル買い戻し)によるところもある。円はこのドルと拮抗している。