「もうこれ以上は持ちこたえられない」
企業関係者のこんな悲鳴が、今までどれだけテレビや新聞で報道されて来たことだろうか。
昨年来の原燃料高に直撃されて利益を圧迫された各業界は、今年前半から雪崩を打って「値上げ」を断行してきた。魚介類、肉類、乳製品、冷凍食品、調味料・・・ありとあらゆる生活必需品の価格が急上昇した影響により、消費は想像以上に冷え込んだ。夏以降、燃料高は一服しているものの、コスト圧力と消費減で企業は大きなダメージを被った。
その結果、今期中間決算発表では、大手スーパーや食品などのメーカーを中心に、減益発表が続出したのだ。
そんな苦境に追い討ちをかけたのが、米国リーマン・ブラザーズの破綻に端を発する世界的な金融危機である。各国の実体経済にまで深刻な影響を及ぼしかねない「不況」の足音に恐れおののく消費者のサイフのヒモは、さらに固く閉じられてしまった。
「値下げしないと客足を確保できない。とはいえ、身を削ってまで値下げをするなど、到底考えられない」
こんな先の見えない不安のなかで、企業はジレンマを抱えて喘いでいる。
たとえ金融危機の副産物でも
「円高」に喜ぶ企業が続出
ところがここに来て、そんな彼らが堰を切ったように「値下げ」を始めているのだ。その値下げとは、“円高”という金融危機の副産物を背景にした、「円高還元セール」である。
現在、欧米における金融危機の影響を受け、円の独歩高が続いている。先月24日のロンドン市場では、約13年ぶりに円相場が1ドル90円台を突破し、現在も90円台後半の高水準にある。
この異例の円高がいつまで続くかは流動的だが、現段階では長期化する見通しが強い。円高になればなるほど、企業は海外のモノやサービスをこれまでより安く仕入れることができ、コストが浮いたぶん、商品やサービスを消費者に安く提供することができるというわけだ。